SUBARUの操船で重要な技術要素となるのが「ダイナミック・ポジショニング(DP)」だ。ケーブル敷設船におけるDPは、定点保持を主目的とするものではない。実際の敷設作業で求められるのは、極めて低速で、姿勢と張力のバランスを保ちながら移動し続ける船の挙動制御がその目的となる。
船がわずかに加速するだけでケーブル張力は増大し、逆に減速すればたるみが生じる。横方向の揺れは、掘削溝の蛇行や埋設深度のばらつきにつながる。DPは、こうした影響を最小限に抑え、船体の挙動を穏やかに保つ役割を担う。
SUBARUの操舵室中央右舷寄りに設けたKONGSBERG製DPシステム「K-Ops SDP-21」のコンソール。船位、姿勢、推進器状態を統合表示し、複数スラスターを高精度で制御する[クリックで拡大]SUBARUのDP制御を支えているのが、冗長性を重視した推進操船プラントの構成だ。船尾両舷には360度回転可能なアジマスポッドを備え、前後進や横移動を連続的に制御できる。船首にはトンネルタイプのバウスラスターに加え、作業時のみ船底からせり出して使用する昇降式の船首アジマスポッドを装備する。
この昇降式アジマスポッドは、通常航走時には船体内部に格納し、敷設や修理といった作業時にのみ展開する。これにより、船首側でも高い推力と自由度の高い姿勢制御が可能となり、風圧や潮流、ケーブル張力といった外乱に対して柔軟に対応できる。DPはこれら複数の推進器を統合的に制御し、状況に応じた最適な推力配分を行う。
SUBARUの新規ケーブル敷設で用いるのが「P-8埋設機」だ。船でえい航することを前提とした海底作業機械で、SUBARUの操船能力と切り離して語ることはできない。
P-8埋設機は、海底光ケーブルを敷設しながら同時に埋設を行うえい航式の海底作業機だ。SUBARUからワイヤでけん引され、鋤(プラウ)とウオータージェットを併用して海底を掘削し、最大水深1600m、埋設深度は最大3.3mに対応する。海底条件に応じて埋設深度を制御し、ケーブルに過大な張力を与えない施工を実現する点が特徴だ[クリックで拡大]P-8は船尾からワイヤでえい航され、同時に光ケーブルを送り出しながら海底を進む。自走機構を持たない代わりに、構造を単純かつ堅牢(けんろう)にでき、大きな掘削力を安定して発揮できる。推進を船に委ねることで制御を一元化し、施工品質を均一に保つ。
掘削機構は、鋤(プラウ)による切削とウオータージェットを組み合わせた方式で、海底の土質や状態に応じて使い分けられる。砂質、泥質、締まった地盤など、海底条件は連続的に変化するため、常に最大深度で掘るのではなく、必要十分な埋設深度を安定して維持することが重視される。深く埋めれば安全性は高まるが、その分だけ機械負荷やリスクも増すためだ。
P-8がえい航式であるもう1つの理由が「ケーブル張力の扱い」だ。海底光ケーブルは高い強度を持つ一方で、張力や曲率には厳密な許容範囲がある。施工時に過大な力がかかると、即座に破損しなくても、長期運用での劣化や断線リスクを高める。
そのためP-8では、掘削能力以上にケーブルに無理な力をかけないことを重視している。ケーブルの送り出し速度、船の航行速度、P-8の掘削抵抗は強く関連しており、いずれか一つだけを独立して制御することはできない。ここで重要になるのが、DPによる安定した微速操船だ。操船精度がそのまま施工精度に直結するといえる。
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