住友ゴムが非熟練者でも配合レシピ設計期間95%削減可能にマテリアルズインフォマティクス(2/3 ページ)

» 2025年12月01日 08時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

新材料分野の研究者の開発能力を2倍増

 「新材料開発」のテーマでは、人とAIが協働し、材料探索やパートナー企業(素材メーカー、顧客など)の提案を行う基盤を構築している。同基盤では主に「アイデア出し」や「実用化開拓」が行える。

 アイデア出しでは、ユーザーである研究者が簡潔な指示をAIに入力するとAIが要件処理を行った後、要件に応えるアウトプットを実施する。例えば、住友ゴムの研究者が「弊社の強みが出せる〇〇なゴムは?」とAIに入力すると、「内部応力を光変色で知らせる状態自己診断ゴム」とアウトプットするとともに、新規材料構成案や競合/自社の知財マップ、実用化期待の業種/企業一覧を出力する。

 同基盤を活用することで、定量的効果としては新材料分野の研究者の開発能力を2倍に増やせ、定性的効果としては海外でも同じ仕組みで研究開発可能なことだと見込まれている。

「新材料開発」のテーマ 「新材料開発」のテーマ[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

 「プレミアムタイヤ配合開発」のテーマでは、AIを活用することで、タイヤの配合企画〜開発プロセスの高速化/高精度化を進めている。これにより、新材料標準化までの期間を短縮して開発総コストを3分の1に減らせるとみている。さらに、人力で行っていた先行技術調査をAI化で網羅性を高め、開発業務を高度化し、候補材料選定から試作着手までの期間を2分の1以下に短縮できる見通しだ。

 このテーマで利用しているAIは入力された指示に合わせて開発方針や開発企画書を出力できる。例えば、プロジェクトマネジャーが「2030年発売予定のオールシーズンタイヤ新商品に適した性能目標と実現できる材料は?」とAIに入力すると、「性能目標予測:雪上ブレーキ性能+15%改良が必達」と開発方針が出力される。併せて、「社内材料:+5%改良見込み」「新規材料:+10%改良が必要」「新規材料案:候補材料80件」「実現課題:調達能力が課題」と補足情報も示される。

 もう一例挙げると、プロジェクトマネジャーが「下記条件の材料開発企画を作成。条件1.1000トン以上の調達可能。条件2.アジア圏で調達可能」とAIに入力すると、候補材料の名称や分類、性能予測、調達能力、課題がまとめられた開発企画書が出力される。

「プレミアムタイヤ配合開発」のテーマ 「プレミアムタイヤ配合開発」のテーマ[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

 住友ゴムが両テーマの開発に取り組む背景には、研究開発で活用しているマテリアルズインフォマティクスや新材料開発で課題を抱えている点がある。マテリアルズインフォマティクスでは近年、材料の組み合わせが数百兆通りに達しているだけでなく、今後さらに増加すると見られており、人力での対応が困難だ。新材料開発では、アイデア創出/試作に膨大な時間/コストを要しており、短時間化が求められている。

 そこで、NECとの共創により材料開発における課題の解決を目指している。課題解決の糸口として、非常に短時間で配合レシピを探索し、自社知見の外から未知材料を発見するアプローチを模索している。

先行的取り組みの課題背景 先行的取り組みの課題背景[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

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