矢野経済研究所は、次世代モビリティ市場を調査し、2035年までの国内新車販売台数予測を公開した。2035年には最大成長ケースで10万2100台に達すると予測する。
矢野経済研究所は2025年10月21日、次世代モビリティ市場(電動トライク、電動ミニカー、超小型モビリティ)を調査し、2035年までの国内新車販売台数予測を公開したと発表した。2035年には最大成長ケースで10万2100台に達すると予測する。
2035年の新車販売台数は、最大成長ケースで10万2100台、最小成長ケースで1万8330台と見込む。最大成長ケースでは、実用性と価格(維持管理費を含む)を両立した新型モデルの登場や、自治体/企業による需要喚起が成長を支えると予測する。最小成長ケースでは、市場減速やユーザー需要減退を主な変動要因としている。
海外市場では、カーシェアリングや短期リースなどのサブスクリプション型サービスが広がっている。さらに、マイクロファイナンスや再生専用工場の仕組みなど、エコシステムの整備も市場成長を後押ししている。こうした動きは、日本市場でも次世代モビリティの普及を促す要因になるとみられる。
市場概況としては、日本市場において実証事業などが進められていることから次世代モビリティには一定の需要が見込まれる。移動手段として軽自動車や原付バイクなど多くの魅力的な選択肢がある中で、積極的に超小型モビリティや電動ミニカー(原動機付四輪)を選ぶ人は決して多くはない。
約10年間もの時間をかけて規格が制定された超小型モビリティも、トヨタの「C+pod」が生産終了したことによる市場縮小が予想されていた。しかし、2025年秋のKGモーターズ「mibot」投入を契機に、停滞していた市場に転機が訪れつつある。それは競合製品との価格の違いという単純な構図ではなく、利用イメージがはっきりとした電動ミニカーが続々と市場投入されることを意味する。
欧州市場では、炭素排出量の多い車両の通行を制限する低排出ゾーン(Low-Emission Zone :LEZ)や車道再配分(歩車分離/歩車共存)、モビリティハブを使ったラストワンマイル配送といった欧州都市の再設計という変化が、ミニマムモビリティの市場拡大の要因になっている。
「Ami」で成功したCitroen(シトロエン)に続き、Renault(ルノー)やSEAT(セアト)を始めとする大手欧州自動車メーカーのみならず、中小メーカーによる第2の「Ami」を狙った都市型EV(電気自動車)が登場してきている。さらに、欧州トヨタや中国企業も欧州市場への参入を考えており、欧州のQuadricycle(クワドリシクル:Lクラス四輪車)市場は競争が激化しつつある。
今回の調査では、次世代モビリティの課題や背景を8項目に整理し、欧州市場におけるモビリティと都市インフラの共存戦略も分析対象とした。経済合理性がある前提でEVシフトを進めるには、収益性とユーザーベネフィットの最大化が必須である。低収益率の価格設定では、従来の売り切り型ビジネスで収益を確保しにくい。そのため、サブスクリプションやモビリティサービスなど、新たなバリューチェーンで利益を上げる仕組みが模索されている。
そのような中、業界関係者が同じように警戒するのが、BYDの軽自動車EVである。2026年後半に投入される予定のBYD軽EVは極めて大きな価格力と洗練されたBEV(バッテリーEV)技術で、次世代モビリティの潜在需要を大きく掘り起こす可能性がある。選択肢が拡大する電動ミニカーとBYDの軽EVの出現、希望と脅威が複雑に絡む中で次世代モビリティ市場は大転換点を迎えている。
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