ODMメーカーのアウトプットは、量産する製品そのものだけでなく、次に挙げる成果物も含まれる。
これらは製品設計において最低限必要なアウトプットであり、設計資産に当たる。設計期間は1年以上に及ぶケースがほとんどで、ODMメーカーはスタートアップと進捗(しんちょく)を確認しながら設計を進めていく。その進捗確認で特に重要となるのが、4.試作セットと5.検証項目とレポートだ。
4.試作セットで製品の機能を確認し、5.検証項目とレポートで設計品質(主に安全性と信頼性)を確認する。なお、5.検証項目とレポートは量産後に顧客から故障のクレームがあった場合にも必要となるため、必ず入手しておきたい。
1〜3.に関して、企業機密を理由に提出しないODMメーカーも多い。しかし、設計の難易度によっては当初の見積もり価格に収まらない可能性があるため、双方が納得感を持って話し合えるようにするには、1.部品表と2.コストはぜひ提出を求めたい(参考:連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」の第10回「目標の部品コストを目指して設計していますか?」)。量産後の部品交換が必要な修理やコストダウンの際にも、1.部品表と2.コストが手元になければ、ODMメーカーとの話し合いが困難になる。
3.設計データは、試作部品を発注する前に行う設計審査(参考:連載「アイデアを『製品化』する方法、ズバリ教えます!」の第4回「製品の『設計』工程ですべきこと、そして『設計審査』との向き合い方」)に必要な資料であるため、提出を求めたいところだが、これも拒否するODMメーカーもある。しかし、スタートアップが継続的に自社製品を開発し続けるためには不可欠な設計資産であることから、ぜひとも入手しておきたい。
設計開始から量産までには、一般的に2回の試作が行われる。量産部品や金型を作製する前の確認として「設計試作」があり、量産部品や金型で作った部品の確認として「量産試作」がある。これらの前後で、スタートアップは審査と検証に参加するという重要な役割を担う。
試作には多額の費用がかかるため、スタートアップはこれらの試作部品が発注される前に、設計データ(3D CADデータなど)を確認すべきだ。これが審査に該当する。
試作部品が納入され、試作セットの組み立てが完了した後、スタートアップは試作セットを製品仕様書に照らし合わせて機能を確認する。その後、試験や測定をODMメーカーに実施してもらい、提出された検証レポートによって設計品質を確認する。これらの工程が検証に該当する。審査と検証で問題点が見つかった場合には、設計データにフィードバックしてもらう。
設計試作と量産試作のいずれにおいても出来が著しく不十分な場合には、これらを繰り返す。そして、量産試作で全ての問題が解決されたと判断できた段階で、量産へと移行する。
量産前には、製品本体以外の部品も準備しておかなければならない。梱包(こんぽう)材や取扱説明書、付属品などが該当する。特に梱包材については設計試作の検証にも必要となるため、製品本体とほぼ同時進行で設計を進めておくことが求められる。
量産直前には、承認製品を作製する。承認製品とは、量産セットと同等の試作セットを指す。スタートアップがこの承認製品を承認すれば、ODMメーカーはこれと同じ仕様で製品を量産できることになる。スタートアップが量産された製品の受入検査をする際に、この承認製品との違いが見つかれば、それは不良品といえる。
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