製品の「設計」工程ですべきこと、そして「設計審査」との向き合い方アイデアを「製品化」する方法、ズバリ教えます!(4)(1/3 ページ)

自分のアイデアを具現化し、それを製品として世に送り出すために必要なことは何か。素晴らしいアイデアや技術力だけではなし得ない、「製品化」を実現するための知識やスキル、視点について詳しく解説する。第4回のテーマは、「設計」プロセスで設計者がすべきこと、そして重要な「設計審査」との向き合い方について詳しく解説する。

» 2021年02月18日 11時00分 公開
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 今回は、いよいよ製品化プロセスの中の「設計」の段階に進む。筆者はメカ(機構)設計者であるため、CADによるメカ設計に関してお伝えする。設計者は、試作品や製品を具現化するために必要な設計データをCADを使って作成する。試作品と製品には、自分の設計スキルが形状、そして検証結果として目に見える形で現れる。

 自ら設計した試作品や製品を手にすることは至上の喜びであるが、自分以外の人からの評価の目にさらされるのは厳しいものである。ソフトウェアプログラムのように修正を簡単に反映(アップデート)できないのが、ハードウェア設計のつらい所だ。だからこそ、本稿の後半でお伝えする「設計審査」が重要となる(図1)。

製品化プロセスの中の「設計」と「設計審査」 図1 製品化プロセスの中の「設計」と「設計審査」 [クリックで拡大]

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3Dデータと2Dデータ

 メカ設計者のアウトプットには「3Dデータ」と「2Dデータ」がある。2Dデータをプリントアウトすれば「2D図面」として扱われる。基本的に、3Dデータは3次元の部品形状を表現するものであるが、2Dデータには2次元の部品形状以外にも以下の情報が記載されている。

  • 部品名称
  • 部品番号
  • 管理寸法と公差
  • 材質と色
  • 表面処理

 また、これら以外にも部品に結合部があればその接合方法と強度の指定、ネジ部があればそのサイズ、複数の部品の組立図であれば部品構成とその員数などの情報が記載される。部品には寸法以外にも多くの情報があるため、2Dデータはとても重要な役割を果たす。試作発注や金型発注においては、2D図面が契約書に付随する書類として必要になる。

 一般的に、3D CADには3Dデータから2Dデータを作成する機能が備わっている。試作の直前の部品発注時は忙しく、2Dデータの作成が間に合わず、3Dデータのみで部品を発注し、メールで後から2Dデータの情報を部品メーカーに送付することがある。日本の部品メーカーは優秀であるため、多少情報が欠けていても長い付き合いがあるので、あうんの呼吸で理解してしまうか、もしくは電話で問い合わせして情報を補う。そんなこともあって、「最近の設計者は2Dデータを軽視しがちである」といわれている。

 優秀な日本の部品メーカーの対応に期待し、それに慣れてはいけない。特に海外の部品メーカーに部品を発注する場合、情報伝達にミスが生じて、不良やトラブルが起こりやすい。また、電話がかかってくることは少なく、言葉も通じにくい。そのため、2Dデータを軽んじてはならないのである。

3D/2Dデータの名称と部品表

 部品には個々に「部品名称」と「部品番号」を付ける。名称のみで部品発注する設計者をよく見掛けるが、部品メーカーには他社から製作依頼された部品もあり、類似の名称があると間違えられてしまう可能性がある。よって、部品番号は絶対に必要だ。3D/2DデータのCAD上の名称にもこれと同じ名称を付ける。CAD上の名称が英語でしか付けられないことがあるが、そのような場合は部品形状が頭に浮かべられるような適切な言葉で訳しておきたい。部品番号の末尾には送り番号を付加しておき、データに修正があればその送り番号を繰り上げていくことをオススメする。同じ部品番号では、部品メーカーや購買部が新旧のデータを混同してしまう可能性があるからだ。

 メカ設計者のアウトプットで、もう1つ大切なものは「部品表」である。「BOM」ともいう。部品表は主に部品名称と部品番号、員数が記載されている製品の構成表である。この部品表は、以下のように多目的に活用される(図2)。

  • コスト管理:部品/製品の目標・見積コスト
  • 複数の部品メーカーの管理:試作と量産の部品メーカー名
  • 設計進捗(しんちょく)の管理:3D/2Dデータ、2D図面の作成進捗
  • 材料の管理:部品メーカーへの材料の準備依頼、環境データの作成
  • 部品の発注管理:発注個数、発注/納入日程
多目的に活用される部品表(BOM) 図2 多目的に活用される部品表(BOM) [クリックで拡大]

 筆者は、部品形状とその構成がまだ頭の中やイラスト(後述参照)にしかない設計構想の段階から部品表の作成を始める。このようにしておくと、製品のコストを設計の初期段階から管理できる。製品のコストには、製品本体以外にも取扱説明書や梱包(こんぽう)材、付属品も含まれるため、これらも部品表に記入しておく。

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