シリコン量子コンピュータの大規模化と高信頼化を両立する新制御技術を開発量子コンピュータ

日立製作所は、シリコン量子コンピュータの大規模化と計算の信頼性向上を可能にする2つのスピン量子ビット制御技術を開発したと発表した。

» 2025年10月22日 14時00分 公開
[MONOist]

 日立製作所は2025年10月8日、シリコン量子コンピュータの大規模化と計算の信頼性向上を可能にする2つのスピン量子ビット制御技術を開発したと発表した。創薬や材料開発、金融分野など、量子コンピュータが活用される分野において、社会課題の解決や新たな産業の創出に貢献する。

 新技術の1つは、制御装置から少数の信号線で制御信号を送り、量子チップ近傍に高精度な制御信号を生成する「デジタル制御コンベアベルトシャトリング方式」だ。複雑な配線を不要とし、伝送ひずみも抑制され、拡張性と運用性を高める構造を可能にした。

キャプション シャトリング技術の比較[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 もう1つは、ノイズや外乱の影響を抑え、量子ビットの状態を長時間安定させる制御技術だ。マイクロ波の連続照射と位相制御を組み合わせることで、従来95%だった量子ビットの忠実度を99%以上へと向上させた。これにより、高い計算精度と信頼性を維持しつつ、誤り訂正を前提とした量子計算に対応できる。

キャプション 量子ビット操作手法の比較[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 デジタル制御方式では、シミュレーション上で99.9%の高忠実度を確認した。シンプルな構造で配線ボトルネックを解消し、大規模量子チップの設計を容易にする。

 今後は理化学研究所などとの共同研究を通じて、実チップでの低温実証や、誤り訂正を見据えた多様な制御パターン開発を進める。また、クラウド公開に向けた実証を進め、シリコン量子コンピュータによる誤り耐性量子計算の社会実装を加速するとしている。

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