ブリヂストンは2008年よりAirFreeの技術開発を進めてきた。第1世代(2008〜2013年、1人乗りスローモビリティ向けで車重200kg程度)、第2世代(2013〜2023年、1人乗りモビリティ向けで車重500kg程度)を経て、2023年にこれまでの「AirFree Concept(エアフリーコンセプト)」から「AirFree」へ改称し、第3世代(2〜4人乗りの超小型EV(電気自動車)向け、車重1000kg程度)へと進化させている。
ブリヂストン BSJP直需タイヤ戦略企画/新モビリティビジネス推進部門長の太田正樹氏は「この度、2026年中のグリーンスローモビリティへのAirFree実装に向けて、新モデルを開発した。開発期間は約半年ほどで、カートタイプとバスタイプの2種類を設計した」と説明する。
開発過程では、数十の形状パラメータを用いて3D CADでモデル化し、シミュレーションで荷重時の変形や突起物通過時の挙動、回転時の振動を予測した。さらにこれをAI(人工知能)による最適化計算にかけて、AIが提示する形状パラメータをモデル化し、シミュレーションを重ねる作業を数百回行い、最終形状を決定した。
ブリヂストンは、2024〜2026年の中期事業計画において、AirFreeを同社の「探索事業」と位置付けており、実証実験とグリーンスローモビリティ向けの社会実装を経て長期的な事業化の可能性を検討する方針である。
2024年3月からは軽自動車にAirFreeを装着して、東京都小平市近郊の公道で実証実験を開始した。市街地での平均時速20km走行、郊外での時速40km走行、連続的なカーブや急な上り/下り坂での走行を実証し、現在は未舗装路や砂利道などの不整地での走行と、段階的に走行条件を広げて実証を進めている。実証に使用しているAirFreeの走行距離は約6000kmを超え、無事故無故障で使用を継続できているという。
富山県富山市では2025年11月より富山駅北エリアを走る低速電動モビリティ「Boule BaaS」にAirFreeを装着して走行する実証実験を開始する予定であり、2026年中の実運行開始を目指している。
富山市 活力都市創造部の相川紗南氏は、「グリーンスローモビリティを市民の新たな移動手段としたい」と期待を述べる。また、AirFreeのメリットについては「土日祝日という修理の対応が難しい日程の中で、パンクによる運休リスクがないことは自治体として非常に助かる」(相川氏)と語った。
滋賀県東近江市でもカートタイプのグリーンスローモビリティにAirFreeを装着し、2026年中の実運行開始を予定している。
現時点でAirFreeの導入対象はグリーンスローモビリティと2〜4人乗りの超小型EVが中心だ。「将来的には小型EVトラックや軽自動車などへの導入も想定している」(太田氏))というが、具体的な計画は未定だ。
ブリヂストンは、「Japan Mobility Show 2025」(2025年10月30日〜11月9日、東京ビッグサイト)において、今回開発したグリーンスローモビリティ用の2種類のAirFreeを同社メインブースで展示する。バスタイプは車両と合わせて展示し、カートタイプはAirFree単体で公開する。
なお、今回の説明会で公開したAirFreeは基本構造にアルミホイールを採用したものだったが、Japan Mobility Show 2025ではスチールホイール版のAirFreeを初公開する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク