Armはなぜブランド名を変更するのか、「SME2」投入もAI対応に紆余曲折ありArm最新動向報告(17)(2/3 ページ)

» 2025年10月06日 08時00分 公開
[大原雄介MONOist]

CSSの提供方法にも変化

 CSSの提供方法にも変化があった。

 もともとArmは、ソフトウェアIPをRTL(レジスタ転送レベル)の形でのみ提供する方式でCPUコアのライセンス供与を行っていた。大昔には一瞬だけ、ハードウェアIPを提供した時期があったが、ごく一部のコアでファウンドリ/プロセスも特定のもののみだった。長らくこの状態が続いたわけだが、2010年にArmはPOP(Processor Optimization Package)を発表する(Webアーカイブを参照)。

 最初に対応したのはCortex-A9で、TSMCの40nmプロセスに対応したCortex-A9 MPのPOPが提供された。余談だが、この時はまだArmもPOPの効果に自信がなかったのか、TSMC 40GとTSMC 40LP向けのPOP以外に、TSMC 40G向けのハードマクロも提供している。ちなみに同日、Samsungの32nm LP向けのPOPも発表された(Webアーカイブを参照)。Samsungの方はPOPのみだが、TSMCの方はPOPとハードマクロの両方というちょっと珍しい構成で、どちらを使っても同等の最適化が可能、という説明だった。もっともハードウェアマクロをこの後提供することはなく、POPのみの提供となっている。

 このPOPは特定のファウンドリ/プロセスに向けてPPA(Power、Performance、Area)の最適化を行った形で提供されるため、物理実装というか最適化に要する時間を大幅に減らせるというのがArmの主張であり、実際に広範に利用された。また、POPの適用範囲も次第に増え、単にCPU IPから周辺IPなどを含むようになっていった。

 これらをさらに進めたのがTCS(Total Compute Solution)である。TCSでは複数のCPUとインターコネクトをひとまとめにした形で提供されるようになり(図5)、顧客はさらにSoCの構築が容易になった。ただし、TCSはモバイル向けのみという形で、あまり一般的なソリューションではなかった。これを他の分野にも拡大したのがCSSというわけだ。

図5 図5 モバイル向けに展開されたTCSのロードマップ[クリックで拡大] 出所:Arm

 そんなCSSであるが、今回特筆すべきなのはLumex CSSで再び物理IPが復活したことだ(図6)。

図6 図6 Lumex CSSでは再び物理IPが復活した。ちなみに提供方法はGDS IIとのこと[クリックで拡大] 出所:Arm

 2010年のCortex-A9 MP向けハードマクロ以来、実に15年ぶりである。この理由そのものは明確に示されていないが、昨今の先端プロセスの開発費高騰や、同じプロセッサIPを使って複数社で別々に最適化を行っても大して性能差は出ない(ので、そこが差別化要因になりにくい)以上、そこはArmに任せてそれ以外の部分で設計差別化を行いたいといった顧客の要望が背景にあるのではないかと思われる。

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