立教大学は、回転ワイヤを利用して量子ビーム断面を可視化する「二軸回転ワイヤ走査法」を開発した。1本の細いワイヤを回転させながらビームをスキャンし、得られた1次元データを再構成アルゴリズムで2次元画像化する。
立教大学は2025年9月9日、回転ワイヤを利用して量子ビームの断面を可視化する「二軸回転ワイヤ走査法」を開発したと発表した。粒子線治療など、量子ビームを活用する医療、産業、基礎科学分野での応用が期待される。
幅広い分野で活用される量子ビームは、その形と強度を正確に把握することが安全性や精度の向上に不可欠となる。今回の手法では、1本の細いワイヤを回転させながらビームをスキャンし、得られた1次元データを再構成アルゴリズムで2次元画像化する。
医療用CT技術をヒントにした技術で、0.2mm以下の分解能を維持しつつ、約0.1秒で断面像を生成する。ノートPCでも処理可能な軽量システムとなっており、複雑なパターンも高精度に再現できる。
実験では、格子やユリの紋章をかたどったマスクを用いてイオンビームを切り取り、2次元形状を回転ワイヤCTで再構成した。その結果、複雑な形状も正確に再現することを確認した。
ビームの断面に加え、進行方向に沿った2カ所で断面を測定できるため、ビームの方向や角度の広がりも評価可能だ。ビーム品質の指標の1つ、エミッタンスの定量的把握にも対応する。
弱いビームから強力なビームまで対応可能で、強度分布の絶対値を測定できる点も特徴だ。今後は小型化や処理高速化を進め、リアルタイムでの制御や産業利用につなげる方針だ。
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