AxelLiner事業でアクセルスペースが開発/製造実績を有しているのが50〜200kgの小型衛星である。50〜200kgの小型衛星の市場規模は、2033年に2024年比で4倍に拡大すると予測されている。小型衛星や超小型衛星を手掛ける企業数は増加しており競争環境が激しくなるものの、汎用小型衛星バスの活用によって最短1年での衛星打ち上げを実現し、宇宙用コンポーネントの軌道上実証を支援する「AL Lab」、顧客の独自ミッションを実現する専用衛星の開発を支援する「AL Pro」などサービスの多様化も進めて対応する方針だ。
また、AxelLiner事業では大型の政府案件受託事例である「Kプログラム」に参画していることが事業を安定的に運営する上で大きく貢献している。光通信技術を用いた衛星コンステレーションの運用実現を目指しており、予算規模は最大600億円となっている。
AxelGlobe事業は、光学衛星を用いた衛星画像サービスを提供しており得意としているのは中分解能領域だ。米国企業と競合しているが、空間分解能が高いこと、データ提供方法が顧客のニーズに応じて柔軟に衛星画像を撮影できるタスキングベースであることを優位性にして事業を拡大していく方針である。
現在アクセルスペースがAxelGlobe事業で展開する衛星は5機の「GRUS-1」だ。2026年には新たに開発した「GRUS-3」を7機打ち上げる予定だ。これによって、同地点の観測頻度、撮影可能面積、観測バンドなどを向上できるという。折原氏は「アクセルスペースホールディングスの黒字化の目標時期は明らかにしていないが、このGRUS-3の打ち上げは黒字化に向けた大きなジャンピングポイントになる」と意気込む。
なお、AxelGlobe事業でも政府プロジェクト案件を積極的に獲得していく方針であり、防衛省が公表したSAR(合成開口レーダー)衛星と光学衛星を組み合わせた安全保障案件での採択を目指す。同案件では、7機のGRUS-3に加えて、2028年5月期に打ち上げ予定の3機の高分解能機も活用する方針である。
宇宙事業を手掛ける上でリスクになるのが、衛星の打ち上げ失敗や軌道上での故障発生などの事態である。まず、衛星の打ち上げでは、成功率が99.32%と極めて高いSpaceXの「Falcon 9」を用いることでリスクを担保している。「ただし1社依存もリスクになるので、新たな打ち上げ事業者も探していきたい」(中村氏)という。
軌道上での故障発生では、AxelGlobe事業で運用するGRUS-1のうち1機について姿勢制御に不具合が発生した事例がある。この事例については、衛星データの提供が他衛星4機で対応可能なことを確認した上で、姿勢制御のアルゴリズムをアップデートすることで商用利用の再開に向けた復旧を進めているところだ。これらの復旧作業は手動で行われたが、今後は自動運用システムにノウハウを反映することでより早期の復旧が可能になるようにしていく方針である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.