　小型衛星スタートアップのアクセルスペースは2023年8月1日、東京都内で開催した15周年記念式典において、これまでの沿革を振り返るとともに、これからの同社の成長をけん引する2つの事業である衛星画像サービスの「AxelGlobe」と、小型衛星の開発から量産、運用までをカバーする「AxelLiner」の方向性について説明した。AxelGlobeは、自社で打ち上げる小型衛星のコンステレーションの機数を倍増させて同地点の撮影頻度を1日1回とする一方で、AxelLinerについては衛星開発のプラットフォームとなる「AxelLiner Terminal」の先行提供を2024年初頭に開始するなどして、2026年までに事業体制を確立したい考えだ。

　2008年に創業したアクセルスペースは、2013年にウェザーニューズ向けに開発した「WINSAT-1」を皮切りに、現在まで9機の小型衛星を開発してきた。アクセルスペース代表取締役CEOの中村友哉氏は「小型衛星技術のパイオニアとして、これからも宇宙ビジネスの先頭に立ち続けていくために立ち上げた2つの事業の柱がAxelGlobeとAxelLinerだ。自社で構築した小型衛星によるコンステレーションに基づく衛星画像サービスであるAxelGlobeから得た顧客からのニーズを、小型衛星の開発から量産、運用を一括して担うAxelLinerに反映し使い勝手の良い衛星をリーズナブルで提供できるようにする。そのAxelLinerに基づいてAxelGlobeの小型衛星をさらに充実させるという形で、2つの事業が両輪となってシナジーを生み出すユニークなビジネスモデルだと考えている」と語る。

アクセルスペースの衛星開発実績［クリックで拡大］出所：アクセルスペース

アクセルスペースの成長を担う2つの事業［クリックで拡大］出所：アクセルスペース

AxelGlobeのコンステレーションは5機から12機体制へ

　AxelGlobeは、小型衛星の有用性を示すべくアクセルスペースが開発し、自ら打ち上げた「GRUS」を用いた地球観測サービスである。2018年打ち上げの「GRUS-1A」の段階では1機体制だったが、2021年には一気に4基を追加することで5機体制となり、小型衛星コンステレーションによる高頻度地球観測プラットフォームとして軌道に乗り始めている。

AxelGlobeのコンステレーションの体制［クリックで拡大］出所：アクセルスペース

　これまでの地球観測は、政府が発注する軍事防衛向けを中心とした大型衛星による高分解画像取得がほとんどだった。これに対してAxelGlobeは、小型衛星による中分解能画像取得に重点を置きつつ、衛星間で連携するコンステレーション化によって撮影頻度と撮影面積を拡大し、低価格での民間利用を可能にすることを特徴としている。

小型衛星コンステレーションによる地球観測の特徴［クリックで拡大］出所：アクセルスペース

　現在、AxelGlobeの分解能は2.5mで、日本を含む中緯度域における同地点の撮影頻度は2日に1回となっている。2025年には新開発の小型衛星「GRUS-3」を7機打ち上げることで、コンステレーションを構成する機数は12機となり、撮影頻度は1日に1回となる計画だ。さらに2026年には、分解能が40cmとなる高分解能画像の小型衛星を追加することも計画している。

　AxelGlobeの事業が高い評価を得ているのは、衛星画像の提供にとどまらないソリューションとしての展開にある。例えば、高頻度撮影によって雲のない状態の画像をモザイクのように組み合わせて広域で雲なし画像を作成できる「Cloudless Mosaic」は、違法森林伐採を摘発する用途をはじめブラジルやモンゴル、マレーシアなどで採用されている。また、AxelGlobeの立ち上げ当初には想定していなかった宇宙空間を撮影する「宇宙状況把握」といったニーズも出ている。この宇宙状況把握への対応は、小型衛星に組み込んだ機能を最大限活用しつつ、コンステレーションの運用を柔軟に変更することで実現したという。

「Cloudless Mosaic」の撮影イメージ［クリックで拡大］出所：アクセルスペース

　また、AxelGlobeの事業展開で重視しているのがグローバルで80社以上に拡大しているパートナーとの連係である。「解析などのインサイトを加えたソリューションとして販売していくためにもパートナーの果たす役割は大きい。AxelGlobeの売上高比率が国内と海外でほぼ半々になっているのもパートナーのおかげといえるだろう」（中村氏）。