アクセルスペースが宇宙用コンポーネントの軌道上実証に特化したサービス「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」を発表。2026年内を予定しているAL Labサービス適用第1号としては、2020年から同社とシナノケンシが共同開発を進めてきたリアクションホイールが対象となる。
アクセルスペースは2024年7月17日、東京都内で会見を開き、2022年に発表したAxelLiner事業発の新サービスとなる、宇宙用コンポーネントの軌道上実証に特化した「AxelLiner Laboratory(以下、AL Lab)」を発表した。また、2026年内を予定しているAL Labサービス適用第1号として、2020年から同社とシナノケンシが共同開発を進めてきたリアクションホイールが対象となることも明らかにした。なお、アクセルスペースは、今回の発表と併せてAL Labサービスの営業活動を始める方針。サービス提供価格は、対象機器のサイズで1U(10×10×10cm)当たり10万米ドル以下を目指す。
AxelLiner事業は、汎用バスの採用や多品種製造に対応した量産手法、高度な自動運用システムにより100kg級の小型衛星を使い勝手良くリーズナブルに提供することを目指している。アクセルスペース 代表取締役CEOの中村友哉氏は「2023年夏に米国で開催された小型衛星関連の学会である『Small Satellite Conference』でAxelLiner事業を紹介したところ、複数の宇宙機向けのコンポーネントメーカーから軌道上実証の用途で興味を持ってくれた。そこから検討を進めてきたのが今回発表したAL Labサービスになる」と語る。
日本を含めて世界各国で民間参入が進む宇宙産業の市場は拡大を続けており、2040年には2020年比で約2倍となる1兆米ドルに達するという予想もある。この拡大する宇宙産業に向けて半導体や電子部品、材料などの提供を検討する企業が大きく増加することが見込まれる。これらの半導体や電子部品、材料などが、地上とは異なる厳しい宇宙環境に耐え得ることを示す必要があり、軌道上実証は必要不可欠なサービスとなる。アクセルスペース 共同創業者 Co-CTO(宇宙機技術担当)の永島隆氏は「軌道上実証を希望するプレイヤーのニーズに応えるサービスを提供し、宇宙産業のサプライチェーン構築、裾野拡大に貢献していきたい」と強調する。
国内でも政府が2024年4月に基本方針を決定した宇宙戦略基金において、「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」がテーマの一つに選ばれており、軌道上実証の需要は拡大していくことが見込まれる。しかし現状では、軌道上実証サービスの機会は少なく、軌道上実証のために専用衛星を独自調達すると高コストになってしまう。一方、コストを抑えるためロケットに相乗りするホステッドペイロードサービスでは、柔軟な実証計画を立てられず十分な累積稼働時間も確保できない。何より、「宇宙用コンポーネントメーカーのニーズに即した付加価値サービスが提供されていない」(永島氏)ことも大きな課題になる。
AL Labサービスは、軌道上実証サービスにおけるこれらの課題を解決することを目指している。軌道上実証の機会を定期的に提供し、対象機器の開発状況や実証希望内容などの個別ニーズに合わせ、柔軟に打ち上げタイミングを選択可能にする。また、これまでに10基の衛星の開発、打ち上げ、運用を手掛けてきたアクセルスペースの衛星オペレーターとしての知見を生かし、対象機器の実際の軌道上実証結果のレビューを行う。さらに、宇宙産業における技術成熟度の指標であるTRL(Technology Readiness Level)相当の認証を第三者的に付与するサービスも提供していく。加えて、AL Labサービスを利用した宇宙用コンポーネントの販売支援も行う方針である。
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