社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第13回は、前回に引き続き「量産開始後のODMメーカーとの関係」について取り上げる。
前回は、量産直前から生産が終了するまでに必要となるODMメーカーとの関わりとして、「1.承認製品の作製」と「2.製造ライン監査」について解説した。その続きとなる今回は、量産後の関係性として挙げられる以下の項目を取り上げる。
3.修理(量産後)
4.設計変更(量産後)
5.在庫処分(量産後)
6.4M変更(量産後)
7.生産設備メンテナンス(量産後)
製品は、壊れるものだ。その理由は、スタートアップとODMメーカーが決めた設計品質以上の使い方を、ユーザーがする場合があるからだ。例えば、ノック式のボールペンにおいて、ノックする頻度を「1日10回/耐用年数1年」と想定して設計した場合、ノック部が壊れないかを確認する試験では、10回×365日の計算で3650回のノックを行い、この回数以下で壊れないような設計にする。この場合、ノック部の設計品質は3650回となる(※実際の試験ではこの回数に安全率を掛けるが、ここでは省略する)。しかし、ユーザーが3650回以上ノックした場合は、ノック部が壊れる可能性があるといえる。
もし壊れた場合、「1日10回/耐用年数1年」という想定が適切ではなかったと判断することもできるし、3650回以上ノックするのは想定する必要がないヘビーユーザーによるものと捉えることもできる。しかし、いずれにせよユーザーから修理の依頼があれば、スタートアップは対応しなければならない。
以上のような、決めた設計品質がユーザーの使い方と合っていなかった場合以外にも、設計ミスや製造ミスが判明して修理することもある。本来、設計ミスは生産開始前に、製造ミスは製品の出荷前に、品質管理システムによって検出されるべきだが、見つからなかった場合には、販売後に修理対応が必要となる。
製品に不具合があると、まずユーザーからWebや電話で連絡が来る。ここでは、スタートアップが対応し、ユーザーから不具合の症状を聞き取り、対応方法を決定する。修理ではなく、交換部品を送るだけで済む場合もあれば、適切な使用方法を説明することによって解決するケースもある。
不具合の原因が分からなければ、ODMメーカーに不具合の症状を伝えた上で、想定される適切な対処(原因/修理内容/交換部品/修理費用)についての連絡をもらう。その後、スタートアップは修理するかしないか/修理費用はどのように負担するかをユーザーに連絡して決定する。
修理を行う場合は、故障した製品をユーザーからODMメーカーに送付してもらい、修理完了後に返送してもらった上で、費用処理を行う。修理方法には、出張修理や持ち込み修理といった手段もある。
Webや電話で受けた製品の「不具合の症状」と、ODMメーカーによる「修理の内容」は統計を取り、今後の修理体制の構築や、次回の新規製品の設計に役立てたい。
なお、ここでは「ユーザーとの対応」はスタートアップ、「修理」はODMメーカーが行うとしたが、実際にはどちらが行っても問題はない。ただ、現実的には「ユーザーとの対応」を行うODMメーカーはほとんどなく、同様に「修理」ができるスタートアップも少ない。
修理で交換できる部品はあらかじめ決めておく。主に、次のような種類がある。
また、交換する部品に関して、次の項目をあらかじめ決めておく。
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