さて、式8は正しいのでしょうか。これを確認するために「ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)」式と比較してみましょう。ナビエ・ストークス式は次式で表されます(参考文献[1])。
円筒座標系におけるナビエ・ストークス式では、速度の記号が以下のように変わります。
式9の左辺の演算子は式11です。
今回の問題では、流れに時間変化がないため、式11の右辺第1項はゼロになります。次に、Vr=Vθ=0であるため、第2項および第3項もゼロです。さらに、z座標が変わっても流速分布が変化しないため、第4項もゼロになります。よって、式9の左辺はゼロとなります。
式9のラプラス演算子∇2は、円筒座標系では式12となります。なお、円筒座標系における軸方向はz方向ですが、図5での軸方向はxなので表記を変えます。
Vr=0、Vθ=0、さらに外力ベクトルもゼロであるため、式9の軸方向成分は式13として表されます。
流速uは、角度θと流れの方向に対して一定値であるため、結局式12は次のようになります(式14)。
圧力はxだけの関数で、流速uは半径だけの関数なので、偏微分記号を微分記号に変えます。そして、μ=ρνの関係式を用います。
おおっ! 式8と一致しました。計算に誤りはなかったようです。
では、式8を解いてみましょう。とはいえ、この微分方程式を筆者の力で解くのは難しいため、カンニングします。参考文献[2]によると、式8の一般解は式16となります。
この一般解を微分すると、速度勾配は式17で表されます。
境界条件から積分定数を求めます。中心上では対称性から、せん断応力はゼロになります。これは、円筒座標系においてマイナスの半径という概念がなく、半径ゼロの位置では、発生したせん断力を支える相手が存在しないためです。このことから、式18が成立します。
式18を式16に代入すると、積分定数C1はゼロになります。
パイプ壁面の流速はゼロなので、式19が成立します。
式19を式16に代入すると、積分定数C2は式20となります。
積分定数を式16に代入すると、速度分布は式21で表されます。
この速度分布は放物線になりますね。中心の流速を求めるときは、r=0を代入しますが、これでは流速がマイナス値になりそうです。しかし、圧力勾配dp/dx(※2)がマイナス値であるため、結果として流速はプラス値となります。つまり、圧力が下がる方向に流体が流れることを意味します。同様に、熱伝導の場合も温度が下がる方向に熱が伝わりましたよね。
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