三菱重工は社内の全体最適で「桁違いのスケール拡大」を目指す製造マネジメントニュース(2/3 ページ)

» 2025年06月02日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 エナジー、プラント/インフラ、物流/冷熱/ドライブシステム、航空/防衛/宇宙は競争力強化が課題になる。AR(拡張現実)活用や運転データによる“健康診断”、デジタルツインなどでサービスを高度化し、新たな事業機会を開拓する。また、事業構成を最適化し、事業環境に合わせた構造改革を進める。具体的には、サービスへのシフト、海外を含めた生産/販売拠点の統合や最適化、重点領域への人的リソースのシフトなどに取り組む。先行する例としては合弁事業化した三菱ジェネレーターや、統廃合と最適化を実施した製鉄機械などがある。

 2024事業計画の達成により、高利益体質を成長投資につなげる好循環を中長期的に実現していく。

新たな価値の創出と、新たな顧客や地域の開拓に取り組む[クリックで拡大] 出所:三菱重工

普段はスリムな運営、重要局面ではリソースを結集

 2024事業計画では、不確実性に備えながら市場の変化に柔軟に対応し、新たなビジネスチャンスを捕捉/創出していく考えだ。事業内のバリューチェーン最適化と、事業間での連携でスピード感をもって全体最適と領域拡大に取り組む「Innovative Total Optimization」を推進していく。

Innovative Total Optimizationの概要[クリックで拡大] 出所:三菱重工

 全体最適に関しては、業務プロセスのスリム化や開発のスピードアップ、リードタイム削減などスリムな運営に取り組む。経験値や技術、IT、知的財産などは全社的な共通基盤として扱い、社内の先行事例を他の事業にも展開する。社会インフラ製品の統合監視を実現する「ΣSynX Supervision」がその一例で、製鉄機械向けに実績のあるシステムを小型のCO2回収装置や交通システム、原子力や防衛などにも広げる。ベストプラクティスや失敗、変化の予兆なども共有し、過去の知見を最大限生かした事業運営を行う。

 スリムな運営においては組織横断タスクフォースによってリソースの集中的投入を推進する。平時の運営は極力スリムにするが、新製品の開発や急激な増産など中長期の戦略にかかわる重要な局面では社内エキスパートの人的リソースを集中的に投入する。リソース投入は、各事業の成長シナリオの計画に基づき、経営層で優先順位を判断する。

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