図4に各種要素について、入力と出力を示す。すなわち、モーターは電気を機械に変換、発電機は機械を電気に変換、ギア(減速機、増速機)は回転数とトルクを変換、タイヤは回転を直進に変換、ファン(ポンプ)は機械エネルギーを流れのエネルギーに変換、バッテリーは化学を電気に変換する要素である。
図4のうち、ギア、タイヤは伝達機構の式、ファンは流体の式もしくは実測値から定義できる。これらの変換式については本連載で何度か紹介しているのでそちらを参照いただきたい。
一方、バッテリーは化学反応を扱うため、機械系のモデリングでは通常実験式を用いて表現し、化学反応そのものは扱わないことが多い。また、モーターは電磁気学の知識が必要で、次節で詳しく述べる。なお、図4に示した要素は全て2入力2出力系で表現可能で、入力パラメーターの積も出力パラメーターの積もいずれもパワーの単位で、損失がない限り両者は等しい。
ただし、全ての要素がこのように明瞭に表現できるわけではないので注意が必要だ。例えば、連載第24回で取り上げた風車のブレードは、風(風速)を受けてパワーを出力する1入力1出力系で、この変換式の定義には複雑な手順が必要となる。ドライヤーのモデリングで登場したヒーターは電気(電流、電圧)を入力、熱量を出力する2入力1出力系である。
モーターの変換式に関しては、その結果のみを何度か紹介した。ここでは、モーターの基本原理である電磁気から始め、変換式の導出までのプロセスを説明する。
図5にモーターの定式化の際に登場する電磁気学の基本原理を示す。
1つ目は「磁場下にある電線に電流を流すと電線は力を受ける」というもので図5左図のように示すことができる。これを式で表現すると、
となる。Bは磁束密度(磁場の強さ)、iは電流、lは磁場下にある電線の長さ、Fは発生する力である。式中の(×)は外積であること意味し、その定義を図6に示す。すなわち、発生する力の方向は磁場の方向と電流の方向に直交している。なお、磁場の方向と電線の方向は直交しているとは限らない。上記の式を電磁力の式という。
2つ目は「磁場下にある電線を動かすと電線に電流が流れる」というもので図5中央のように表現される。これを式で表現すると、
となる。vは電線の速度、Vは発生する起電力である。この式を誘導起電力の式という。
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