オリンパスの相模原物流センターにおける倉庫自動化プロジェクトが最終段階を迎えた。これまでに導入した3つの自動倉庫システムに加えて自動梱包ラインを構築したのだ。この自動梱包ラインは、コスト削減ではなく、貨物の絶対数と容積の圧縮を目標に掲げている。
消化器系内視鏡で世界トップシェアを誇るオリンパスは、同社の主力国内物流拠点である「相模原物流センター」(相模原市南区)において倉庫自動化プロジェクトを推進している。MONOistでは、2023年4月の同センターの報道公開を基に、自動倉庫ロボット「AutoStore」や村田機械のバケット自動倉庫などの最新設備を投入し、従来とは異なるGTP(Goods to Person)を取り入れた業務設計を図った同プロジェクトの詳細を前後編の記事で紹介した。
この段階でも、従来と比べて1日当たりの出庫行数(オーダー数)で38%増、同31%の省人化、製品の保管可能数で同21%増といった2025年度の目標を前倒しで達成していたが、相模原物流センターにおける倉庫自動化プロジェクトはこれで終わりではなかった。いわゆる「物流2024年問題」に対応するための施策として、トラックに積載する貨物の絶対数と容積の圧縮を目指した自動梱包ラインの構築が最終段階として残っていたのだ。
この最終段階に向けて導入したのが、段ボール大手レンゴー製の高さ可変自動梱包機「J-RexS(ジェイレックス)」である。これによって2025年1月から自動梱包ラインが稼働を開始し、同センターの倉庫自動化プロジェクトの当初計画が完了した。このことを受けてオリンパスは2025年3月5日、同所を報道陣に公開した。本稿では、この報道公開の内容を基に自動梱包ラインの構築に向けた取り組みについて紹介する。
会見の冒頭では、2025年1月にオリンパスのSCM 日本地区統括に就任した大久保怜氏があいさつを行った。大久保氏は「相模原物流センターでは、2019年からSCM日本地区統括の前任である田中(亮氏)の下で倉庫自動化プロジェクトがスタートしたが、今回の自動梱包機の導入により一つのめどを迎えた。『医療を止めない物流』を目指してきたが、今後は物流2024年問題の解決などより幅広い課題の解決に取り組んでいく」と語る。
相模原物流センターの倉庫自動化プロジェクトではこれまでに、保管効率重視の「AutoStore」(オカムラ)、作業スピード重視の「バケット自動倉庫」(村田機械)、ピック完了品の順立てを行う「ユニシャトル」(村田機械)という3つの自動倉庫システムを導入してきた。そして、これらメーカーの異なる自動倉庫システムを一気通貫で横串を通して連携/制御できるように、WMS(倉庫管理システム)はオリンパスで内製している。
これら自動倉庫システムの導入と併せて三位一体で進めてきたのが、GTP概念を取り入れた業務設計と、動作経済原則を用いた作業者の動きのデザインである。同プロジェクトをけん引してきたSCM ディストリビューションジャパン シニアエキスパートの原英一氏は「倉庫プロセスの6〜7割は、作業者が物を取りに行くための歩行に費やされているといわれている。これを根本から変えて、作業者のところに物がやってくるのがGTPだ。さらに、作業者が振り向いたり、手を大きく上げたり、次に何をするべきか考え込ませたりさせないために動作経済原則を活用した」と強調する。
それでは、今回新たに構築した自動梱包ラインはどのような狙いに基づいて取り組んだのだろうか。
相模原物流センターでは、3つの自動倉庫システムと作業者の連携により、仕向け地に送る医療製品が1個のコンテナの中に仕分けられ、梱包ステーションに送られる。この梱包ステーションでは、コンテナに入っている医療製品のサイズに見合う段ボールを選んで組み立てた後、医療製品をコンテナから出して段ボールに詰め、段ボールを封かんしてからコンベヤーに載せる。段ボールは、このコンベヤーで各トラック便に対応したカゴ台車への最終仕分けを行うスペースに送られ、トラック便が到着次第カゴ台車にある段ボールはトラックの荷室に積載され仕向け地に送られる。
3つの自動倉庫システムの導入よって進めてきた倉庫自動化プロジェクトでは、スピードアップ、省人化、保管効率向上という3つの目標を掲げていた。自動梱包ラインについても、当初はこれらと関わりの深いコスト削減が目標になっていたという。原氏は「実は、自動梱包ラインについては最適な設備がなかったこともあって先送りにしていた。この最適な設備の市場投入を待つ間に、荷主側であるオリンパスとして物流2024年問題にどのように取り組むかが課題に浮上してきた。そこで、コスト削減を優先するのではなく、物流業者への負荷削減につながる、貨物絶対数と容積の圧縮を可能な限り行うことを目標に定めた」と述べる。
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