東大と筑波大のスパコン「Miyabi」はAIで科学を変えていく――JCAHPCの4氏に聞くAIとの融合で進化するスパコンの現在地(4)(4/4 ページ)

» 2025年01月27日 08時00分 公開
[関行宏MONOist]
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「AIを活用した科学研究の革新」を目指す

―― 最後に、今後の展望などを聞かせてください。

建部氏 やはり性能には期待しています。NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipは、Hopper GPUとGrace CPUとがお互いのメモリをコピーなしで直接アクセスできるのが大きなメリットですし、Hopper GPUとGrace CPU間のメモリバンド幅が十分に大きいので、最適化されていないアプリケーションでも性能を出しやすいと思っています。

塙氏 建部さんが言ったのと同じような話なんですが、Hopper GPUがGrace CPU側の120GBのメモリを借りてくるような使い方もできるので、Hopper GPUの性能をより発揮しやすいのがNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipと言えます。また、NVIDIA H100 Tensor コア GPU向けに書いたコードとの互換性があるので、GPUプログラミング経験のあるユーザーにとってもMiyabiは使いやすいんじゃないかと思います。

朴氏 NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipを本格的に使ったスパコンは日本ではMiyabiが最初※4)ですし、ユーザーにとってより使いやすいシステムになることは間違いないだろうと。また、Hopper GPUは、HPCとしての用途にもAIの研究開発にも使えます。いずれにしてもAI for Scienceを一層加速させていく、というのが大きなメッセージです。

※4)JCAHPC調べ

中島氏 記事にはぜひ「AIを活用した科学研究の革新」と書いてください。AIを単純に何かに使うというよりは、AIで科学を変えていくんだと。そうした考えはおそらく産業利用にも応用できるはずです。

―― AIというと、どうしても応用よりもテクノロジー寄りの話が中心になりがちです。

朴氏 LLMという言葉は浸透してきて、例えばChatGPTに質問を投げると何か教えてくれますけど、LLMの本当のすごさは、シミュレーションしたデータをあるモデルに与えると、予測をしてくれたり欠損データを推論で出してくれたりする。それが本当のLLMの使い方の進化だと思うんですよ。

中島氏 最近は天気予報にLLMや基盤モデルを適用することによって、従来は数千ノードのスパコンを何時間も回さなければ答えを出せなかったのが、GPUボード数枚で数分で答えが出るという事例が紹介されています。比較的粗いメッシュで短期間の場合にのみ適用できる、というような制限がありますが、あっという前に答えが出せる。そういった可能性をAIで目指していければと思います。

―― Miyabiが本格稼働する2025年1月14日以降、さまざまな研究が加速するとともに、産業利用がより活発になることを期待しています。本日はありがとうございました。

左から、中島研吾氏、朴泰祐氏、建部修見氏(JCAHPC 運用支援部門 副部門長) 左から、中島研吾氏(JCAHPC 研究開発部門 部門長)、朴泰祐氏(JCAHPC 施設長)、建部修見氏(JCAHPC 運用支援部門 副部門長)。3氏の後ろにあるのが「Miyabi」だ[クリックで拡大] 撮影:関行宏
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