CC-Link IE TSNが世界に先駆けて産業用オープンネットワークに採用したTSN技術について、概要と主な特長を説明します。
TSN技術は、イーサネット上で定時性を有した通信を実現するための、国際標準規格IEEEによって策定されている一連の規格群の総称です。詳細は後編にて解説しますが、OSI参照モデルの第2層であるデータリンク層に位置します。
主な規格に時刻同期方式を規定したIEEE 802.1AS、時分割方式を規定したIEEE 802.1Qbvがあります。これらの規格を組み合わせることで、一定時間内での伝送を保証する定時性(Deterministic)や、異なる通信プロトコルとの混在を実現できます。
この時刻同期(Time synchronization)とスケジューリングを可能にする技術によって、リアルタイム性の必要なデータを低遅延で同期通信しながら大容量のデータを通信させることができ、ネットワークの統合(Convergence)を可能にし、さらにそれらの大量のデータがAI(人工知能)を活用したアプリケーションで解析される際には、正確なタイムスタンプによって分析精度の向上が期待できるため、スマートマニュファクチャリングに欠かせない特長を持つことになります。
シリアルベースの産業用ネットワークを第1世代、イーサネットベースの産業用ネットワークを第2世代、そしてTSN技術をベースとする産業用ネットワークを第3世代として説明されることもあり、このTSN技術の国際標準化によって、複数の異なるプロトコルの相互運用性(Interoperability)の基盤となる点においてこれまでの産業用ネットワークと一線を画します。
この特長を体現する活動が「TIACC(TSN Industrial Automation Conformance Collaboration)」です。
正確には、2022年にAvnu Alliance、ODVA、OPC Foundation、PROFIBUS&PROFINET InternationalとCC-Link協会の5団体が「IEEE/IEC 60802 TSN Profile for Industrial Automation」の共通テストプランを共同開発することを発表し、この活動を「TIACC」と称しています。
IEEE/IEC 60802は、IECとIEEEが共同で進めている産業用TSN(TSN-IA)プロファイルを定義する規格のことです。このプロファイルに準拠する全てのネットワークが使用する共通認証試験仕様を開発することで、メーカーやネットワークの異なるデバイスがTSNレベルで相互運用可能となるエコシステムの基盤となることにより、エンドユーザーの信頼に貢献します。
2024年のFORTUNE BUSINESS INSIGHTSの調査では、グローバルなTSNの市場規模は2024年の4億5388万米ドルから2032年には35億1771万米ドルに成長すると予測されており、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は29.2%になっています。TSN規格の一部はまだ策定中ですが、CC-Link協会が世界に先駆けて産業用オープンネットワークに適用した意義がここにあります。
後編では、CC-Link IE TSNの主な特長について説明します。
CC-Link協会は日本・アジア初&発の産業用オープンネットワークの推進団体として2000年11月に設立され、2025年に25周年を迎えます。「CC-Linkファミリー」のグローバルレベルの普及活動と技術開発を推進するため、CLPAパートナーと一体となった活動で相互運用性の確保や技術サポートを行い、産業界のニーズに応えるソリューションを提供しています。
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