CC-Link協会は、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、産業用ネットワークの業界団体としていち早く市場投入を表明したTSN対応規格「CC-Link IE TSN」の価値を訴えた。また、将来的な産業用ネットワークの発展を見据え、ワイヤレスへの対応技術なども紹介した。
CC-Link協会(CLPA)は、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、産業用ネットワークの業界団体としていち早く市場投入を表明したTSN対応規格「CC-Link IE TSN」の価値を訴えた。また、将来的な産業用ネットワークの発展を見据え、ワイヤレスへの対応技術なども紹介した。
CC-Link協会では2018年11月にTSN(Time Sensitive Networking)に対応した産業用ネットワーク規格「CC-Link IE TSN」を発表。欧州でも同月に開催された制御技術の展示会「SPS IPC Drives 2018」に出展し大きな注目を集めた※)。
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「TSN」は、イーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証しリアルタイム性を確保できるようにしたネットワーク規格である。特徴として、物理層などはそのままに、時刻同期や優先的に通すデータを制御する機能などを加えることができ、リアルタイム性の確保が可能である点などがある。時間を厳密に規定できるために機器などから情報を収集する際にタイムスタンプを合わせることが可能となる他、異なるプロトコルの通信を、通す時刻を分けることでハードウェアに手を加えることなく通信ができるなど、IoT(モノのインターネット)に非常に適した規格だとされている。
「CC-Link IE TSN」はこのTSNにいち早く対応した産業用ネットワーク規格である。各ネットワーク規格もTSN対応の表明や機器準備などは進めているが、「CC-Link IE TSN」では、三菱電機から2019年5月に対応機器投入が発表されるなど、市場投入までの動きが早い※)。
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ハノーバーメッセ2019での出展は、「SPS IPC Drives 2018」以来の欧州でのアピールの場となるが、CC-Link協会 事務局長の川副真生氏は「2018年11月の日本とドイツでの発表後は2019年2月に北米や中国でもアピールを行い、手応えを感じている。産業用ネットワークでも『イーサネットの次はTSNの時代だ』とする声も高まっており、一定レベルの認知は進んだと考えている。今後は実際の製品投入や開発ツールの提供などを増やしていきたい」と語る。
さらに産業用ネットワークをワイヤレス化する提案なども行った。これはNECとの協力で実現したもので、NECの技術である「ExpEther」と無線技術を活用。「ExpEther」は、イーサネットを従来のIPデータ通信用として用いるだけでなく、接続距離が限られるPCI Expressやクロック信号、ユーザー独自のI/O信号などのデータ通信路として用いることで、接続距離の延長を可能にする技術である。一般的なイーサネットスイッチ機器や無線LAN機器を用いた場合においても、データ欠損しない高信頼性通信が可能となる特徴を持つ。
CC-Link協会はこの「ExpEther」の特性と、「CC-Link IE TSN」の特徴を組み合わせ、ワイヤレスでもデータ欠損がなく時刻同期性を確保できる無線通信のデモを行った。「ロボットの制御などシビアなリアルタイム性が必要な領域はまだ難しいが、タイムスタンプ付きのデータをワイヤレスで簡単に収集したいという目的には適合する」(NEC)としている。
川副氏は「5Gなど産業用ネットワークの世界にもワイヤレス化の動きが今後は入ってくる。その際に産業用ネットワークがどのように変化していくのかは見極めていく必要がある。ワイヤレス化も含めて新技術には積極的に対応していきたい」と考えを述べている。
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