いまさら聞けないCC-Link IE TSN入門(前編)産業用ネットワーク技術解説(2/3 ページ)

» 2025年01月20日 08時00分 公開

CC-Link IE TSNの適応範囲

 2024年6月に経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」が策定されました。このガイドラインの定義を参考にしながら、工場のネットワークにおけるCC-Link IE TSNの適応範囲について、全体像を踏まえて説明します。

図2 工場のネットワークのイメージ 図2 工場のネットワークのイメージ[クリックで拡大]出所:CC-Link協会

 はじめにガイドラインでは「スマートマニュファクチャリング」と合わせて「スマート化」についても次のように定義されています。

スマート化:デジタル技術の進展による膨大なデータの収集蓄積能力、蓄積データの圧倒的情報処理能力、瞬時の情報連携能力を背景に、さまざまな状況における遅滞のない意思決定をサポートすること、意思決定情報を元に実際の物(や人)の行動のコントロール(制御)につなげること

スマートマニュファクチャリング:データとデジタル技術を活用して、自社内のマニュファクチャリングに関する各チェーンを横断して最適化を図ること。すなわち、デジタル技術を媒介としたデータを活用し、マニュファクチャリングチェーンのさまざまな意思決定と制御を加速させる取り組み

 ガイドラインでは、スマートマニュファクチャリングを形成するデジタル技術についても、以下の7つの機能に整理されています。

図3 スマートマニュファクチャリングを形成するデジタル技術 図3 スマートマニュファクチャリングを形成するデジタル技術[クリックで拡大]出所:NEDO

 スマート化の成熟度の進展について、より良質な情報を蓄積、共有、活用できるかが課題であるとあり、センサーやコントローラーなどそれぞれの機器の性能だけでなく、産業用ネットワークのつなぐ力が、これらの機能、つまりスマートマニュファクチャリングを成り立たせる上で、必要不可欠なものとなっています。

 CC-Link IE TSNが世界で初めて産業用ネットワークに採用したTSN技術は、正確なタイムスタンプ情報を現場データに付加し、高速高精度な同期制御と同時に、複数のプロトコルを時分割方式で同一幹線上に混在でき、データ分析に必要な情報収集を実現できることが特長です。

 これにより、CC-Link IE TSNは、図2で示した上位のITシステムから製造現場のFAシステムまでシームレスに連携できるだけでなく、高度なモーション制御に代表される高精度な制御通信の実現を両立できます。

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