今回の感光性フィルムを開発するに当たって、レゾナックの計算情報科学研究センターはJMPの統合解析ソフト「JMP」とAIを活用した樹脂設計を行った。手順は以下の通り。
まずポリマー樹脂の主要特性に影響を与えるパラメーターを列挙した。次に、JMPとAIを用いて、3780通りの共重合成分から10種類の樹脂を合成し、合成した樹脂のパラメーターの検証を2回実施。続いて、検証によって有効性を確認したパラメーターと化学構造データベースから、ポリマー樹脂として有望な候補10種類を合成し、その性能を検証した。
これらの取り組みによりポリマー樹脂の設計モデルを作成。この設計モデルで導き出した、解像度特性が高い樹脂候補の12種を6μmのレジスト薄膜で検証し、感光性フィルムで使用する樹脂を選定した。その後、統計解析技術によりフィルムの組成を決めた。
パッケージングソリューションセンターが行った同フィルムの試作/評価では「セミアディティブプロセス(SAP)による銅配線の形成」「パネルプロセスで形成したレジストパターン」「パネルプロセスで形成した銅回路」をチェックした。
一般的なSAPによる銅配線の形成では、上部に無電解銅(シード層)を設けた基材の表面にレジストとPETから成る感光性フィルムをラミネートする。次に、半導体露光装置やフォトマスクを用いてこの基材にマスク露光を行い、露光部のレジストを硬化させる。この基板に対して弱アルカリ水溶液で現像を実施し、硬化していない未露光部を取り除く。続いて、めっき前処理を行い、銅めっきを実施。その後、強アルカリ水溶液で露光部のレジストを剥離し、フラッシュエッチングでシード層の無電解銅を除去すると銅配線が完成する。「当社が開発した感光性フィルムの構成や用いたSAPの詳細は同フィルム技術の根幹に関わるため非公表としている」(吉原氏)。
同社は今回の感光性フィルムを用いたSAPによりパネルプロセスでレジストパターンを形成した結果、パネルの各部分で均一なレジストパターンが形成できることを確認した。さらに、パネルプロセスで形成した銅回路を確かめたところ、線幅1.5μm/間隔1.5μmの配線を形成可能なことが分かった。
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