量子コンピュータはさまざまなゲート方式があるものの、基本要件の一つである2量子ビットゲートで99.90%以上の高い忠実度を実現しているのは超伝導回路方式と、イオントラップ方式だけである。
超伝導回路方式で99.90%以上を達成している事例は、素子構造がシンプルで作製が容易なトランズモンではなく、コイルが必要になるなどより複雑なフラクソニウムを用いている。今回の東芝と理研の事例は、トランズモンとしては世界で初めて99.90%以上を達成しており、超伝導回路方式で4例目となる。
これまでトランズモンを用いた研究では、量子ビットの周波数差と残留結合の大きさがトレードオフの関係になっていた。今回の発表では、ダブルトランズモンカプラが、このトレードオフを打破し全ての特性を向上することが実証できたという。「理論の実証は今回が初めての取り組みであり、ポテンシャルとして2量子ビットゲートの忠実度を99.90%以上に向上するポテンシャルは十分にある」(後藤氏)という。
なお、今回の研究は、東芝 研究開発センター ナノ・材料フロンティア研究所 フロンティアリサーチラボラトリー 主事の久保賢太郎氏、同ラボラトリー スペシャリストの何英豪氏、後藤氏(理研 量子コンピュータ研究センター 量子コンピュータアーキテクチャ研究チーム チームリーダー)、理研 量子コンピュータ研究センター 超伝導量子エレクトロニクス研究チーム 特別研究員のRui Li氏、同チーム 特別研究員のZhiguang Yan氏、チームリーダーの中村泰信氏(理研 量子コンピュータ研究センター センター長)らの共同研究グループによるものだ。
今回の研究成果は、米国東海岸時間で2024年11月21日発行の米国物理学会の学術誌「Physical Review X」に掲載された。
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