金属ナノクラスターの表面構造制御により水素生成触媒を高活性化研究開発の最前線

東京理科大学は、粒径1nm程度の微細な金属ナノクラスターの表面構造を制御し、水素生成触媒活性を高めることに成功した。高価な貴金属を使用する電極触媒は、金属使用量を削減できる高活性化が求められている。

» 2024年11月15日 11時00分 公開
[MONOist]

 東京理科大学は2024年10月25日、粒径1nm程度の微細な金属ナノクラスター(NC)の表面構造を制御し、水素(H2)生成触媒活性を高めることに成功したと発表した。

 今回の研究では、3通りの配位子交換反応を用い、金(Au)原子に白金(Pt)原子をドープした従来のAuPt合金NCである[Au24Pt(TBBT)180に加え、ステープル構造(表面構造)の異なる[Au24Pt(TBBT)12(TDT)30、[Au24Pt(TBBT)12(PDT)30をそれぞれ合成した。

キャプション (a)[Au24Pt(TBBT)18]0、(b)[Au24Pt(TBBT)12(TDT)3]0、(c)[Au24Pt(TBBT)12(PDT)3]0の合成条件と幾何構造[クリックで拡大] 出所:東京理科大学

 この3つの金属NCについて水素発生反応(HER:Hydrogen Evolution Reaction)の活性を調べたところ、[Au24Pt(TBBT)180に比べ、[Au24Pt(TBBT)12(TDT)30は3.5倍、[Au24Pt(TBBT)12(PDT)30は4.9倍に高活性化していることが明らかとなった。

キャプション 3種のAuPt合金NCの(a)LSV曲線、(b)−0.35Vvs.RHEにおける質量活性比較[クリックで拡大] 出所:東京理科大学

 [Au24Pt(TBBT)12(TDT)30と[Au24Pt(TBBT)12(PDT)3]0では、TDTやPDTにより、金属コアであるAu原子の溶媒露出表面が大きく、プロトン(H)のアクセスが容易になりHERが向上したと考えられる。

キャプション (a)[Au24Pt(TBBT)18]0、(b)[Au24Pt(TBBT)12(TDT)3]0、(c)[Au24Pt(TBBT)12(PDT)3]0の溶媒露出表面[クリックで拡大] 出所:東京理科大学

 水(H2O)からH2を製造する水電解技術は、ネットゼロカーボンに向けたキーテクノロジーの1つだ。しかし、電極触媒に高価な貴金属が使われており、製造コストの抑制のため、金属使用量を削減できる高活性化が求められている。

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