モノづくり企業が行う従業員の育成/能力開発に関する環境整備については、伝統的な改善提案やQCサークル(小集団改善活動)などの奨励に加え、「能力評価制度の導入」や「目標管理を通じた能力の棚卸し」「自社の技能マップの作成」など、従業員の技能習得のプロセスを支援する環境整備も一定程度行われている。一方で、これらの環境整備を「特に何も行っていない」とした企業も15%程度存在する(図11)。
約8割の企業が、従業員が身に付けた能力/スキルを実務で発揮するための取り組みを行っている。取り組みの内容としては、「そのままの配置で身に付けた能力/スキルに関連する業務を指示」が63.8%と最も多い一方で、「プロジェクトチームなどの人選での身に付けた能力・スキルの考慮」が13.7%、「社内公募制度の導入」は3.3%となっている。このことから、配置転換やプロジェクトチームの人選まで踏み込む企業は限られているとみられる(図12)。
従業員が習得した能力/スキルの処遇への反映については、正社員については5割以上の企業が「昇給(基本給の引き上げ)」や「賞与への反映」など賃金に反映していた。この他、「役職などの昇進/昇格」への反映も3割を超える企業が行っていた。
一方で、正社員以外では「昇給(基本給の引き上げ)」は27.5%、「賞与への反映」は19.7%、「役職等の昇進・昇格」は6.1%にとどまっている。正社員と正社員以外では身に付けた能力/スキルについて、処遇への反映に差が生じていると考えられる(図13)。
従業員の育成/能力開発を行っている企業のうち、経営面または人事面の効果を「実感している」「やや実感している」とした企業は6割程度となっている(図14、図15)。効果を感じている企業は、「技術水準や品質の向上」や「従業員の能力・スキルの底上げ」などで、期待した効果を実感している(図16、図17)。
従業員の育成/能力開発を行っている企業のうち、経営面と人事面どちらも効果を「実感している」とした企業(1割程度)について分析すると、能力開発周辺の仕組みの整備に取り組んでいる割合が高い。なかでも、従業員の技能習得のプロセスを支援する「能力評価制度の導入」や「個人ごとの育成計画の作成」などの環境整備が進んでいる(図18)。
身に付けた能力を実務で発揮するための取り組として、「関連する部署・担当への異動・配置転換」や「プロジェクトチームへの人選の考慮」が進んでいる(図19)。また、「昇給」や「役職等の昇進・昇格」など、身に付けた能力の処遇への反映も進んでいる(図233-3)。
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