国内リチウムイオン電池劣化診断機器・サービス市場規模は2035年に19億7000万円へ電動化

矢野経済研究所は、国内のリチウムイオン電池劣化診断機器・サービス市場を調査し、用途別状況、参入企業動向、中長期見通しについて発表した。同市場は拡大基調であり、2035年には19億7000万円に達する見込みだ。

» 2024年10月18日 09時30分 公開
[MONOist]

 矢野経済研究所は2024年9月24日、国内のリチウムイオン電池劣化診断機器・サービス市場を調査し、用途別状況、参入企業動向、中長期見通しについて発表した。同市場は拡大基調であり、2035年には19億7000万円規模に達する見込みだ。

 電気自動車(EV)などの電動車や定置用蓄電池(ESS)の市場は拡大傾向にあるが、それらに使用するリチウムイオン電池(LiB)は使用度合いに応じて経年劣化し、電池残容量が低下するという課題がある。

 中古EVの流通量拡大やリユースLiB活用を含むESSの最適な運用を進める上で、妥当な診断時間や充電コストなど効率的なLiB劣化診断機器の実用化に注目が集まっており、LiB劣化診断機器の開発やサービス拡充に向けた取り組みが活発になっている。

 オートリース業界では、法人ユーザーが脱炭素の取り組みの1つとして進める社用車のEV化に対応した動きがある。企業のEVリース車の採用拡大を目的に、EV残価価値設定への対応としてLiB劣化診断機器・サービス導入の検討が進んでいる。

 今は、主に環境意識の高い大手企業が社用車としてのEVを導入している。大手企業以外へのEV採用拡大、及びオートリース会社各社がEV提案を促進する事による、これからのリース価格競争の激化を踏まえると、EV残価価値設定問題の解決、価格競争力向上に向けた取り組みが同業界において今後重要になってくる。

 LiB劣化診断技術を導入することで、オートリース各社はEVの残価価値設定に対して、ある指標を持つことが可能となり、同指標による自社の資産としてのEV価値の最大化や残価分を考慮したリース料金の値下げなどにつながると考える。

 国内のリチウムイオン電池劣化診断機器・サービス市場は、2035年には19億7700万円に成長すると予測する。現在、同市場は黎明(れいめい)期の段階だが、今後、まずはEV向けでの立ち上がり、その後にESS向けで展開されると予測する。

 ESS向けはLCA(ライフサイクルアセスメント)も考慮に入れ、リユースLiBの利用が注目を集めており、LiB劣化診断技術との組み合わせによる効率的な運用、アセット最大化が期待される。ただし、現在の日本国内におけるEV市場規模および使用済み車載用LiBの回収状況から、ESS用LiB向け市場の立ち上がり時期はEV用LiB向け劣化診断の後になると見込まれる。

 また、その他民生小型機器用LiB劣化診断については、本年時点で先行して事業化事例があり、今後もLiB搭載機器の増加により需要は増加するものの、他用途と比較して、金額ベースの市場規模では小規模にとどまると見込む。

キャプション リチウムイオン電池劣化診断機器・サービス市場の動向[クリックで拡大] 出所:矢野経済研究所

 なお、LiB劣化診断は電池内部の安全性を確認する側面もある。近年、海外を中心にLiB発火事故の事例が増加傾向であることを踏まえると、今後、リユースLiB向けも含めた安全性診断は重要性を増していくと考えられる。

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