微生物が照明に? パナソニックHDが大阪万博で示す将来技術研究開発の最前線

パナソニック ホールディングスは、大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオンで、将来を見据えた環境配慮型の技術として「バイオライト(発光微生物)」を出展する。

» 2024年10月08日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のパナソニックグループパビリオンとして「ノモの国」を出展予定だが、その中で将来を見据えた環境配慮型の技術として「バイオライト(発光微生物)」を出展する。

photo バイオライトの実験モデルによるデモの様子[クリックで拡大]

パナソニックグループのパブリオンでは環境関連の技術を展示

 パナソニック ホールディングスは、大阪・関西万博で「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトにパビリオン「ノモの国」を出展する。「Unlock your nature」をタグラインとし、子どもたちに「自分を信じるチカラと一歩を踏み出すきっかけ」を提供することを目指している。

 そのコンセプトの下、体験を中心とした「Unlockエリア」と、環境配慮型の先進技術の展示を行う「大地エリア」の2つのゾーンを用意している。「大地」では、ひとの営み、自然の営み、それぞれが360度の循環が作用しあって巡る「720度の循環」を展示空間で表現。研究開発中のシアノバクテリア(光合成微生物)、ペロブスカイト太陽電池、生分解性セルロースファイバーなどを出展する。

自然界で発光する微生物を活用した明かり

 こうした技術の1つとして出展するのが「バイオライト」だ。バイオライトや自然界に存在する蛍や夜光虫など、動物が発光する仕組みをそのまま生かし、明かりへと応用することを目指したパナソニックHDで開発中の技術だ。具体的には、発光を触媒する酵素が入りの水槽で培養した発光微生物に対し、展示水槽に酸素を送り込むことで、微生物が発光することで得られる明かりの活用を目指している。大阪・関西万博では、展示水槽やびんなどにより手に取って、微生物が発光する様子を観察できるような展示を考えているという。

photo 電球型のびんに入れた発光微生物を光らせた様子[クリックで拡大]

 パナソニックHDでは、以前から製品開発における生体への反応を確認するために微生物に対する基礎研究は行っており、その中で発光微生物についても取り扱っていた。今回大阪・関西万博で出展する技術をパナソニックグループ内で集める際に、発光微生物の明かりを生かせないかと考えて応募し選ばれたという。

 研究開発では、発光微生物の最適な長期培養条件を確立するため、培地選定や水質選定、水循環システムなどの構築などに取り組んでいる。「餌となる酵素の組み合わせや水温、酸素の循環などの条件などさまざまな組み合わせを試しているところだ」(担当者)としている。

 まだまだ明かりとして活用するには明るさが足りないが「5〜10年先に何らかの形で製品やビジネスとして進めばよいと考えている。まだまだ技術的には課題が多いのは事実だが、自然の発光を生かすということで、ひとと自然の関わりをあらためて考えるきっかけにもなると考えている」(担当者)。

photo 発光微生物が入った水槽。酵素があり酸素を吹き込むことで微生物が発光する。「自然光の中で展示水槽の色が少し汚く見えることも課題だ」(担当者)としていた[クリックで拡大]

照明演出や端材活用のワークショップやアイデアソンも開催

photo パナソニックHD 関西渉外・万博推進担当参与 小川理子氏

 パナソニックHDでは、大阪・関西万博のプロモーションにも力を入れており、2024年9月27日には、パナソニックグループのパビリオンデーの内容発表なども行った。「ノモの国」での体験と技術展示に加え、ストリートダンスのコンテストや、子どもたちが参加できる「ノモのコ プロジェクト」などを用意。照明演出を考えるワークショップや、ファサード膜の端材をアップサイクルで活用するアイデアを募る「ハザイソン」などを開催する。

 パナソニックHD 関西渉外・万博推進担当参与 小川理子氏は「ノモの国を通じて、子どもたちが自らの可能性に気付くきっかけに出会えるとうれしい」と述べている。

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