北陸先端科学技術大学院大学は、高密度なイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体を合成した。リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池の負極バインダーとして適用でき、特性を改善する。
北陸先端科学技術大学院大学は2024年9月17日、高密度なイオン液体構造を有する新たな高分子化イオン液体(PMAI)を合成したと発表した。バイオベースポリマーであるポリフマル酸をアリルメチルイミダゾリウムヒドロキシドと中和させる高分子反応により、リチウムイオン二次電池(LIB)やナトリウムイオン二次電池(NIB)の負極バインダーとして適用可能なPMAIの合成に成功した。
PMAIとグラファイトとのコンポジット(PMAI/Gr)やハードカーボンとのコンポジット(PMAI/HC)による銅箔の引きはがし試験では、いずれもPVDF系のコンポジットを上回る接着力を示した。LIBやNIBの負極バインダーとして用いると、負極内の金属イオンの拡散が促進され、放電容量や耐久性などの特性の向上につながることが明らかとなった。
具体的には、LIBの場合、放電容量が1Cにおいて297mAh/gとなり、750サイクル後に80%の容量維持率を示した。5Cにおける急速充放電能は、PVDF系の約2倍となる85mAh/gだ。
NIBでは、容量維持率が200サイクル後に96%を示し、放電容量は60mA/gで250mAh/gとPVDF系の約2倍。走査電子顕微鏡(SEM)による観察で、負極マトリックス上のクラックがPVDF系よりも少なく、安定化していることが分かった。
PMAI/Gr、PVDF/Gr系の充放電サイクル特性(LIB、負極型ハーフセル)。(a)1C(800サイクル)、(b)5C(1000サイクル)。SEI抵抗の電圧依存性(RSEI vs. V)、(c)リチウム挿入反応中の電圧、(d)リチウム脱離反応中の電圧[クリックで拡大] 出所:北陸先端科学技術大学院大学
(a)(d)PMAI/HC、PVDF/HC系の充放電前のSEM像、(b)PMAI/HC、(e)PVDF/HC系の充放電後のTopView像、(c)PMAI/HC、(f)PVDF/HCの充放電後の断面像[クリックで拡大] 出所:北陸先端科学技術大学院大学同大学はこの技術に関する特許を出願済みで、今後、将来的な社会実装に向けた企業との共同研究を進める考えだ。
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