AI活用の障壁であるアノテーションの自動化でパナソニックHDとFastLabelが協業人工知能ニュース(1/2 ページ)

パナソニックHDとFastLabelは、パナソニックグループのAI開発の効率化を目的とし協業を行う。AIプロセス全体の効率化とともに、パナソニックHDが開発するマルチモーダル基盤モデル「HIPIE」とFastLabelのData-Centric AIプラットフォームを統合し、自動アノテーションモデルとして構築する。

» 2024年09月30日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)とFastLabelは2024年9月27日、パナソニックグループのAI(人工知能)開発の効率化を目的とし協業を行うと発表した。AIプロセス全体の効率化とともにパナソニックHDが開発するマルチモーダル基盤モデル「HIPIE」とFastLabelのData-Centric AIプラットフォームを統合し、自動アノテーションモデルとして構築する。

photo 提携を発表したパナソニック ホールディングス テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター 所長の九津見洋氏(左)と、FastLabel 代表取締役 CEOの鈴木健史氏[クリックで拡大]

 パナソニックHDにおけるAI開発は、パナソニックグループが抱える幅広い事業での活用を想定しており、高い品質や信頼性が求められるリアル空間への適用を目指している。この観点から、あらゆるユーザーが素早く簡単に使える「Scalable AI」と信頼に応えられる責任を確保する「Responsible AI」という2つの方向性での開発を進めている。

photo パナソニックHDのAI開発の方向性[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 この2つの方向性を踏まえたマルチモーダル基盤がパナソニックHDが開発する「HIPIE」だ。HIPIEは、大規模言語モデルの事前知識を生かし、任意のテキスト入力に基づきセグメンテーションタスク(画像内の物体を特定し、画素レベルで識別すること)を実行できる画像認識用のマルチモーダル基盤モデルだ。画像AIにおける学習結果だけでなく、言語AIでの学習結果も組み合わせることが可能で、画像としては未学習の物体でもゼロショットで認識が可能である点などが特徴で、それぞれの現場で活用するための学習負荷を大きく低減できる。

photo マルチモーダル基盤モデル「HIPIE」の概要[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 ただ、HIPIEのようなマルチモーダル基盤があったとしても、パナソニックHDが目指すように幅広い事業の幅広い現場でAIを活用できるようにするためには、それぞれの現場ごとのデータ収集やそのデータのアノテーションなどが必要になる。AI人材が限られる中、各現場で負荷の高いアノテーション作業などを行うことは難しく「AIの活用を広げる意味でも、アノテーション作業の効率化については課題だと感じていた」とパナソニック ホールディングス テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター 所長の九津見洋氏は述べる。

photo AI開発プロセスの課題[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 そこでアノテーション作業におけるAIパートナーを模索しているところで、FastLabelに出会い協業に進む話になったという。「当初はアノテーション作業のみを対象としていたが、FastLabelでAIインフラ全体の効率化などについても強みがあることが分かったため、より広い範囲での協業を行うことにした」と九津見氏は語っている。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.