東京大学は、水素を主な反応試剤に用いて水のみが排出される抗アルツハイマー薬の連続合成に成功し、水素を使う化学変換を基軸とする環境調和型化学製品生産のコンセプトを実証した。
東京大学は2024年9月6日、水素を主な反応試剤に用いて、水のみが排出される抗アルツハイマー薬の連続合成に成功したと発表した。水素を使う化学変換を基軸とする、環境調和型化学製品生産のコンセプトを実証した。
今回の研究は、低環境負荷の化学品製造に関するコンセプトを実証するために、抗アルツハイマー薬の前駆体であるドネペジルの合成に取り組んだものだ。
安価な原料からの合成には高難度の触媒的化学変換が必要なため、新たに高機能金属固定化触媒を開発し、連続フローシステムに取り込んだ。3種類の原料と反応剤である水素を4つの触媒カラムリアクターに送液し、直列的に連結した複数の連続フローシステムを介することで、中間体や共生成物の取り出しや分離を必要とせずに、原料から最終生成物のドネペジルまで変換することに成功した。
化石資源からの脱却が求められるなか、水素を原料とする有機化合物合成法は今後さらに重要性が増すと考えられる。今回の研究成果により、適切な反応設計と優れた触媒を用いれば、水素を活用した環境調和型化学品製造が可能であることが実証された。
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