パナソニックとヤンマーの協業が第2段階へ、ガスヒートポンプエアコンで合弁製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

パナソニック 空質空調社とヤンマーエネルギーシステムは、ガスヒートポンプエアコン(GHP)室外機の開発と製造に関する合弁会社を2025年4月に設立することで合意した。合弁会社設立と同時に共通化モデルとなる次期製品の開発を開始し、2026年1月から生産を始める計画である。

» 2024年09月02日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 パナソニック 空質空調社とヤンマーホールディングス傘下のヤンマーエネルギーシステム(以下、ヤンマーES)は2024年8月30日、東京都内とオンラインで会見を開き、業務用空調機の一つであるガスヒートポンプエアコン(GHP)室外機の開発と製造に関する合弁会社を2025年4月に設立することで合意したと発表した。合弁会社設立と同時に共通化モデルとなる次期製品の開発を開始し、2026年1月から生産を始める計画である。

会見の登壇者 会見の登壇者。左から、ヤンマーエネルギーシステム 代表取締役社長の山下宏治氏、ヤンマーホールディングス 代表取締役(COO)の山本哲也氏、パナソニック 空質空調社 社長の片山栄一氏、パナソニック 空質空調社 設備ソリューションズ事業部 事業部長の池田博郎氏。4氏の後ろにあるのは両社のGHP室外機である[クリックで拡大] 出所:パナソニック、ヤンマーホールディングス

 合弁会社の社名は「パナソニック・ヤンマーGHP開発製造株式会社」で、資本金は9000万円、出資比率はパナソニック ホールディングス51%、ヤンマーES49%。GHPを製造するパナソニックの群馬工場(群馬県大泉町)と、ヤンマーESの岡山工場(岡山市東区)を拠点とし、本社は群馬工場内に置く。従業員数は250人程度になる見通し。代表取締役社長などの経営陣は、2025年初をめどに今後両社で決定する。なお、合弁会社の売上高などは非公開としている。

新たに設立する合弁会社の概要 新たに設立する合弁会社の概要[クリックで拡大] 出所:パナソニック、ヤンマーホールディングス

近しい経営理念を持つパナソニックとヤンマー

 GHPは、ガスエンジンを動力源としてコンプレッサーを駆動する業務用空調機で、電気式ヒートポンプエアコン(EHP)に比べ消費電力が約10分の1と少なく、夏場の電力ピークカットに大きく貢献できることや、ランニングコストもEHPの50〜60%程度に抑えられることを特徴とする。近年では、発電機の搭載で停電時に空調や照明などの電気機器が使用可能になる電源自立型や、BCP(事業継続計画)に役立つエネルギーミックスに対応するガスエンジンと電気モーターの両方を搭載したハイブリッド空調などラインアップを拡充している。

GHPは冷房、暖房のための冷媒サイクルを回すコンプレッサーの動力源にガスエンジンを使用する空調だ GHPは冷房、暖房のための冷媒サイクルを回すコンプレッサーの動力源にガスエンジンを使用する空調だ[クリックで拡大] 出所:パナソニック、ヤンマーホールディングス
GHPの特徴 GHPの特徴[クリックで拡大] 出所:パナソニック、ヤンマーホールディングス

 このGHPの国内大手メーカーとなるのがパナソニックとヤンマーESだ。パナソニックは1985年に業界に先駆けてGHP第1号機の開発/製造を行い、ヤンマーESも同時期にGHP事業に参入しており、2023年までの両社のの累計出荷実績は能力ベースで約2900万kW、台数ベースで約66.6万台に達する。国内シェアもそれぞれ30%弱となっており、新たな合弁会社はGHP室外機の設計製造ベースで約60%の国内シェアを握ることになる。

両社のGHP事業の歴史 両社のGHP事業の歴史。累計出荷実績のグラフの内、青色がパナソニック、赤色がヤンマーESだ[クリックで拡大] 出所:パナソニック、ヤンマーホールディングス

 パナソニックとヤンマーESは2022年12月、パナソニックの吸収式冷凍機とヤンマーESのコージェネレーションシステム(コージェネ)の組み合わせによる分散型エネルギー事業の開発と販売で協業することを発表しているが、今回の合弁会社設立はさらに一歩踏み込んだ施策となる。

 パナソニック 空質空調社 社長の片山栄一氏は「カーボンニュートラルへの移行が進む中で、エネルギーの安定供給や災害対策にも対応していく上で、天然ガスは現実的で重要なエネルギー源だ。このガスを使ったGHPの需要は今後も堅調に推移するだろう。ヤンマーとの間では、経営理念が共通することや事業領域が近いこともあり、2022年から協業を行っている。今回の合弁会社設立では、強靭なGHPプラットフォームを作って市場の需要にしっかり応え、次世代ガスエネルギーの活用に向けた未来も切り開いていきたい」と語る。

パナソニックとヤンマーが協業する意義 パナソニックとヤンマーが協業する意義[クリックで拡大] 出所:パナソニック、ヤンマーホールディングス

 ヤンマーホールディングス 代表取締役(COO)の山本哲也氏は「ヤンマーのエネルギーシステム事業では、GHPや非常時にも役立つ発電機、24時間顧客の設備を見守る遠隔監視システムを軸としたメンテナンス事業をはじめ商品の開発、製造、販売、アフターサービスまで一気通貫で事業を展開している。GHPはヤンマーとパナソニックの両社でしのぎを削ってきたが、長年にわたり切磋琢磨してきた強みを補完し合う形で、合弁会社ではより強い開発/製造プラットフォームを構築することで高いシナジー効果が得られると考えている」と述べる。

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