日産が挑む真夏の車内温度上昇を防ぐ塗料、外部表面で最大12℃の温度低下材料技術(2/3 ページ)

» 2024年08月09日 08時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

自動車用自己放射冷却塗料の特徴

 自動車用自己放射冷却塗料は、電磁波、振動、音などに対し自然界では通常見られない特性を発現する人工物質「メタマテリアル」を採用している。その中でも「熱のメタマテリアル」を導入。熱のメタマテリアルは、晴れた冬の夜間から早朝にかけて起こる放射冷却と同じ現象を人工的に引き起こす。

メタマテリアルとは メタマテリアルとは[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 これにより、太陽光を反射するだけでなく、自動車の屋根やフード、ドアなどの塗装面から熱エネルギーを大気圏外に向かって放出することが可能となり、車内の温度上昇を抑えられる。

 具体的には、一般的な自動車の塗料は主に樹脂で構成される。樹脂は多くの分子から成り、これらの分子は太陽光に当たることで振動し、熱が発生する。真夏の炎天下における太陽光を浴びた自動車の塗料は70℃以上に熱くなることもある。

 一方、今回の自己放射冷却塗料も主に樹脂で構成されているものの、2種類のマイクロ構造粒子を含んでいる。1種類目のマイクロ構造粒子は、太陽光の成分の中で樹脂の分子振動を引き起こす近赤外線の電磁波を反射する役割を果たす。

1種類目のマイクロ構造粒子の機能 1種類目のマイクロ構造粒子の機能[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 2種類目のマイクロ構造粒子は、太陽光を受けて塗料内の樹脂の温度が上昇すると、表面で自発的に電荷の偏りが生じる。その後、偏った電荷がある表面は不安定で、安定した状態に戻ろうと双方の電荷が引き寄せられて動く。電荷が動く際に特定の波長の電磁波を発生する。この放射された電磁波は、大気に吸収されないという特徴を持ち、大気を通過し宇宙まで届く。つまり、今回の塗料は2種類のマイクロ構造粒子により熱を電磁波に変換し宇宙に放出する。

2種類目のマイクロ構造粒子の機能 2種類目のマイクロ構造粒子の機能[クリックで拡大] 出所:日産自動車

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.