LMO正極材料を水熱酸浸出させ、それにより得られた水溶液から水熱合成法でLMOの再合成の可能性を検討した。その結果、水熱酸浸出により得られた水溶液を水熱合成させることで、良好にLMOを再合成することができた。
域内産業廃棄物処理企業とLIB回収ルートを検討するため、地域電池製造メーカーに加え、ユーザー企業と話し合いながら、廃棄LIBの現状および将来的なリサイクルに対する考え方をヒアリングした。特に、ユーザー企業のリサイクル担当者数名と打ち合わせをした結果、湿式精錬に高い期待感を抱いていることが明らかとなった。また、従来の湿式精錬ではスケールアップによりコスト低減を目指す必要があることから、発想を変えて小型分散で稼働可能なリサイクルプロセスを指向する必要性が提唱された。ここで記載させていただいているプロジェクトで開発しているプロセスは小型分散型にも対応できるものと考えており、現在、経済合理性や環境適合性などを定量的に検討している。
これまで、水熱炭化条件における温度依存性の評価を行った。具体的には、杉のおが粉に対して鉄触媒含侵の下、所定時間で水熱炭化を施した後、その後2段階目の炭化反応を所定温度、所定時間で実施した(図4)。
得られたサンプルの構造特性を評価した結果、ある特定の条件で水熱炭化を行った場合に高結晶性炭素の前駆体が合成できることを発見した。既報によると、リグニンは炭化反応にほとんど寄与しないことが分かっており、リグニンの溶出条件との関係性などについて現在検討を進めている。今後、正極活物質の水熱有機酸浸出の検討で、既に稼働している連続処理プロセスをベースに、負極剤に関する設計データを2025年度に取得する。また、溶液およびガス成分の分析を行い、詳しい結晶化メカニズムの考察を行うことを予定している。
所定条件で調整した水熱炭化により前駆体から合成した炭素材料を用いたリチウムイオン電池の負極特性を検討した。その結果、人造黒鉛および天然黒鉛と中間のプラトー容量が見られた。一方で、静電容量が人造黒鉛および天然黒鉛と比較し、多くみられたことから、アモルファス状の炭素が残存していることが確認された。これらは、事前に空気雰囲気で燃焼させることで除去することが可能である。
回収された化合物を原料として、LIB正極活物質を合成するのに有効な各種溶液合成プロセスの検討を行った。酸化物系活物質を分離回収された金属溶液から比較的的低温で作製するならば水を反応溶媒として用いる水熱合成(および高温高圧で臨界点以上の合成では超臨界水熱合成)、あるいは非水系溶媒を用いた場合はソルボサーマル法にて所定時間、所定条件で活物質合成が可能な反応プロセスを検討した。
具体的には、正極材として量的に多く、再生資源として利用性が高いMnを研究開発対象としてMn酸化物系正極活物質の溶液合成プロセスを検討した。特にサブテーマ3を担当する東北大学多元物質科学研究所の本間研究室で新規開発した非水溶液系プロセスとして以下の3項目について検討した。
これまで、(1)のアルコール還元法を採用してMn酸化物のナノ粒子合成をさらに検討した。還元性反応溶媒を用いて水溶液および水/有機溶媒混合溶液中に酸化剤を添加して、これを還元性有機溶媒中に混合することでMn酸化物ナノ粒子を合成した。合成されたナノ粒子はXRD構造解析により2×2のトンネル構造を有するホランダイト構造Mn酸化物(-MnO2)であった。ナノ粒子形状は針状のロッド型ナノ粒子であり、水熱合成では太く長い針状結晶を生成した。反応水溶液に別の有機溶媒を混合することによりロッド径の長軸長さを変化させることができた。
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