シャッと出せてシュッと戻る「コンベックス」の仕組み100円均一でモノの仕組みを考える(3)(2/3 ページ)

» 2024年07月30日 09時00分 公開

ケースの中に隠された「スプリング(ぜんまいバネ)」

 コンベックスのケースを開いてみると、ドラム状の部品があり、そこに巻き尺が巻かれています。

 さらに、このドラムを開いてみると、中にはテープ状の金属が巻かれて入っています。これがスプリングです。「ぜんまいバネ」などと呼ばれます。ネジ巻き式の時計やゼンマイ式の玩具などの動力源として使われています。ちなみに、図4はスプリングを指で押えている状態です。指でしっかりと押えておかないと弾けてしまいます。この弾けるぐらい強い弾力性が巻き尺を巻き戻す力となります。

ドラムの中にはスプリング(ぜんまいバネ)が! 図4 ドラムの中にはスプリング(ぜんまいバネ)が![クリックで拡大]

コンベックスの構造と作られ方

 コンベックスの構造を簡略図でもう少し詳しく見てみます(図5)。巻き尺部分が出ていない通常の状態はぜんまいバネがドラムの外壁に当たってそれ以上開くことがなく安定した状態になります。ただし、前述したように強い弾力性を持っているため、ちょっとした力を加えると弾けてしまいます。

 巻き尺を引っ張るとドラムが回転し、中のぜんまいバネが巻かれていきます。巻かれることでバネの弾性力によって通常の状態に戻ろうとする力が働きます。そのため、巻き尺から指を離すと勢いよく巻き戻っていきます。

巻き尺とぜんまいバネの状態 図5 巻き尺とぜんまいバネの状態[クリックで拡大]

 ちなみに、巻き尺とぜんまいバネの締結は非常に単純です。このぜんまいバネの先端は図6のような形状をしています。この先端の形状を、巻き尺の最後の部分に開けられた穴に差し込んで締結しています。

巻き尺とぜんまいバネの締結 図6 巻き尺とぜんまいバネの締結

 巻き尺部分を引き出した際、指を離してしまうと勝手に巻き戻ってしまいます。この巻き戻りを防ぐ働きをするのがロック機構になります。ロック機構の先端が巻き尺部分の表面に押し当てられることで、巻き尺部分を固定する構造になっています(図7)。ロック機構があることで、指を離しても巻き尺が巻き戻ることなく測定値が維持され、正確に長さを図ることができます。

ロック機構 図7 ロック機構[クリックで拡大]

 コンベックスの構造は、巻き尺の先端にあるフック以外の部品をケースで挟み込み、ネジ止めしているだけの非常に単純なものです。プラスチックの部品単体で見ても、基本的にはアンダーカットのない単純な形状だといえます。

 ですが、ぜんまいバネを巻いた形に整えてドラムにはめるという作業は、飛び跳ねようとするバネを押えつつ慎重に進める必要があり、非常に困難を極めました。当然、製品として量産される際は機械や治具などを用いて組み付けているのでしょうが、今回は完全に手作業であったため、最終的に元に戻すのを断念してしまいました……。

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