東北大学は、2次元および3次元の半導体ヘテロ構造で、2次元半導体から3次元半導体への電子の移動効率の向上と、2次元半導体の電荷状態の制御に成功した。NTT物性科学基礎研究所と共同で研究していた。
東北大学は2024年7月9日、3次元半導体に表面処理を施すことで、2次元半導体から3次元半導体への電子の移動効率向上と、2次元半導体の電荷状態の制御に成功したと発表した。NTT物性科学基礎研究所との共同研究による成果となる。
研究では、原子層が平面的に並ぶ2次元半導体と原子が3次元的に配置されている3次元半導体のヘテロ構造に着目。異なる表面処理を施した3次元半導体に2次元半導体を積層して、電荷状態に及ぼす影響を調べた。
具体的には、3次元半導体のヒ化ガリウム(GaAs)基板の表面を「洗浄のみ」(図:type A)、「洗浄と自然酸化膜の除去」(図:type B)、「洗浄と自然酸化膜の除去後、表面の未結合手に硫黄原子を結合させる」(図:type C)という3つの手法で処理。その上に、2次元ファンデルワールス半導体の単層二硫化タングステン(WS2)を積層して、2次元/3次元半導体ヘテロ構造を作製した。
それぞれのWS2の発光スペクトルを調べたところ、自然酸化膜を除去したtype Aとtype Bの2種で、WS2内部の電子の減少を確認。WS2からGaAs基板への電子の移動が推測され、電子の移動効率が高まったと考えられる。
また、他の原子や分子と結合せずに余っている未結合手を硫黄で結合(終端)したtype Cは、低エネルギー側の発光強度が抑制されていた。硫黄で未結合手が終端されたことで、未結合手によって電子が束縛される確率を抑え、電荷状態を制御できることが示唆された。
ファンデルワールス材料は、表面に未結合手を持たないことから、ヘテロ構造の作製時に材料の格子定数に関係なく積層できる。任意の順序と角度でさまざまな材料を積層可能だが、これまで3次元半導体と2次元ファンデルワールス材料の接合では、動作性能が想定より劣っていることが多かった。
表面処理だけで電荷の移動効率や2次元半導体の電荷状態を制御できるという今回の成果は、2次元/3次元半導体ヘテロ構造の性能向上が期待される。
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