本連載では、シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 バイスプレジデントの角田裕也氏が、製造業で起きている変化をグローバルな視点で紹介しながら、製造現場の将来像を考察する。
スマート工場の成功要素とは何か、と問われたら皆さんはどう答えるだろうか。われわれは、下の図に示すように、スマート工場の成功要素は5つあると考えている。本連載では、すでに5つのうち「運用効率と生産性向上」「データのコンテキスト化による効率的な設備保全」「インフラとサイバーセキュリティ」について、世界的なトレンドや日本企業における課題感などを紹介させていただいた。
今回は最終回として、残り2つの要素「エネルギー管理とサステナビリティ」「ガバナンスとチェンジマネジメント」について、重要なポイントをご紹介したい。
今、世界中の企業で脱炭素化への取り組みが当たり前のように進められている。日本においても、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて持続的な成長を目指す企業が、官公庁や学術機関と協力してGX(グリーントランスフォーメーション)への挑戦を行う「GXリーグ」に参画するなど、具体的な取り組みを意識する動きが顕著になってきた。
特に最近では、政府が環境にやさしい事業に投資する「GX経済移行債」の発行を始めたことや、CO2の排出量が増えると製造コストにおいて炭素税がかさむことなど、投資や収益に直結する動きも多くなり、経営層においても脱炭素への意識が急速に高まっているのを感じている。
ただ、欧米の製造業がスマート工場における「エネルギー管理とサステナビリティ」について、すでにいろいろと対策を取り入れているのに対し、日本では必ずしもそうなっていない。組織の縦割り構造が工場での具体的な脱炭素化(Decarbonize)や省エネの取り組みの障壁になっているように思われる。
シュナイダーエレクトリックがグローバルに行った、企業の脱炭素化、サステナビリティ目標に関連する組織的な課題に関するアンケート調査では、「組織として統合された計画の欠如が、脱炭素化の障壁となっている」と答えた企業が80%もあり、「組織的にデータが活用されている」と答えた企業は22%にとどまっている。
すなわち、拠点ごとあるいは海外の現地法人などで個別にデータが収集され、それが全社で一元的に管理できていないといった課題が浮き彫りになった形だ。さらに、「予算制限がサステナビリティ目標達成の障壁となっている」と答えた企業は60%に上った。
では、どのような戦略を立て、データを収集し、スマート工場の実現に取り組めばいいのか。具体的なプロセスについて、われわれが通常スマートファクトリー実現支援のために行っているサポートのアプローチを例にご紹介したい。
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