ワンジェイテクトの技術基盤で次の道を開く、次期中計では選択と集中も辞さず製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2024年06月27日 08時15分 公開
[長沢正博MONOist]
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新たなモビリティの流れにトヨタグループ内で役割分担を模索

 自動車業界ではSDV(Software-Defined Vehicle:ソフトウェア定義自動車)が従来の製造工程やビジネスモデルに大きな変革をもたらすとされ、トヨタ自動車もソフトウェアプラットフォームとして「Arene OS」を発表している。

「SDVを含めた新しいモビリティの流れに、ジェイテクト1社で対応できるとは思っていないし、するべきでもないと思っている。トヨタグループの中で実は今、それぞれの役割分担について話し合っている。では、ジェイテクトはどこになるのかというのは模索中だ。コアコンピテンシーをソリューションに変える役割は他社には比較的ないものであり、グループの中で困りごとを解決する役割を持つ会社になったり、クルマ自体を評価する試験場などを提供しながら他社とコラボする土台のような役割を果たしたりもできる。グループの中でそれぞれの強みを生かしながら、関係をうまくつなぐお手伝いができればと思う」

欧州では身を縮めながら次の一手を探る

 ジェイテクトは2030年の目指す姿へ向けた体質強化の3年間と位置付けた、2021〜2023年度までの第1期中期経営計画を終え、2024年8月には2024年度〜2026年度までの新たな中期経営計画を発表する。

「これまで祖業を中心に事業を拡張してきた中で、市場環境や製品ラインアップ、競合企業も大きく変化している。中期経営計画に向けて今、それぞれの事業戦略、地域戦略、生産戦略、さらに選択と集中も検討している。少なくとも今の延長線上ではいけないということは十二分に認知している。欧州市場は一番苦戦しており、いったん合理化して、身を縮めながら次の一手を考える時期だと思っている。合理化をしていきながら、われわれの競争力に合った対応を強力に進めていきたい」

 日系自動車メーカーが苦戦する中国では、ジェイテクトのEPS(電動パワーステアリング)が広州汽車に採用された。「新しいコスト競争力のあるEPSを中国メーカーに使ってもらえるような活動を当面はしていく」。

2024年3月期決算における地域別の実績[クリックで拡大]出所:ジェイテクト

 近年はIoT(モノのインターネット)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展で、モノづくりの在り方も変化してきた。ジェイテクトでもデジタルなモノづくりの浸透を図る。

「欧米型のデジタルツインはどちらかというとデジタルファーストで、後から実体で出てきたものをIoTで管理していくというスキームが多い。ただ、日本は現場でのカイゼンのようなボトムアップの力が強い。それが、これまではデジタルツインになりにくい環境を作ってきた。今は実体からデジタル化することが精度よくできるようになってきた。これからは、現場からの創意工夫をデジタル化して、日本流というか、双方向型のデジタルツインが大きな役割を持つ。社内ではデジタル化がまだ遅れているので、2024年は底上げをしっかりやっていきたい」

本社で合同取材に応じる近藤氏[クリックで拡大]出所:ジェイテクト

「時は命なり」社員に無駄な時間を使わせない

 近藤氏が大切にしている言葉は「利他の心」「謙虚・感謝」「全員活躍」「時は命なり」「Yes for All, by All」だ。

 「Yes for All, by All」はトヨタ自動車のモノづくり開発センターで働いていた時に作られた言葉だという。「モビリティカンパニーになるためにいろいろなモノを作らなくてはいけない。その時に、これはできる、あれはできないと言うのではなく、何でもみんなで取り組もうということで作った言葉だ。これはジェイテクトにも通じる部分がある」

 また、「時は命なり」はトヨタ自動車の会長などを務めた豊田英二氏の言葉として知られている。「会社におけるリーダーの心構えであり、社員は自分の命を削って働いてくれている中で、その命を無駄にしてはいけないという意味だ。社員の時間は無駄にせず大切に使わなければならない。私自身も社員に生き生きと働いてもらうために無断な時間を使わせない、“人中心の経営”を行っていきたい」

近藤氏がこれまで大切にしてきた言葉[クリックで拡大]出所:ジェイテクト

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