日立ハイテクは、複数の解析装置で同一の試料を観察する際の観察精度や操作性を向上した、走査型プローブ顕微鏡システム「AFM5500MII」を発売する。各種解析装置との連携機能を強化している。
日立ハイテクは2024年6月10日、走査型プローブ顕微鏡システム「AFM(原子間力顕微鏡)5500MII」を発売すると発表した。複数の解析装置で同一の試料を観察する際の観察精度や操作性が向上している。
AFMは、プローブ(探針)で試料の表面を走査し、ナノレベルでの表面の形状観察と物性マッピング評価を同時に実行可能な計測分析装置だ。半導体、高分子などさまざまな産業分野での研究や品質管理に活用され、近年では電子デバイスの省電力化に関する技術開発に利用されている。
AFM5500MIIは、新たにAFMマーキング機能を搭載。AFMの測定箇所の周りに、SEM(走査電子顕微鏡)やCSI(走査型白色干渉顕微鏡)など他の解析装置で観察する際に目印になるマークを作製できる。これにより、同システムで観察した試料の同一箇所を、他の解析装置でも高精度に観察、計測可能になる。観察を効率化、高精度化できる上、解析可能な装置の適用範囲も拡大する。
また、従来の振幅変調方式ケルビンプローブフォース顕微鏡(AM-KFM)に加え、周波数変調ケルビンプローブフォース顕微鏡(FM-KFM)による電位測定モードを追加した。単一材料間での電位や仕事関数比較などに優れたAM-KFMと、定量性が求められる複合材料の計測に活用できるFM-KFMを、ニーズに応じてワンクリックで切り替えられる。AFMとSEMを併用して分析することが多い、半導体や金属材料などの試料の観察において、より高精度な分析が可能になる。
不具合発生時に自動で要因を診断できる、セルフチェック機能も標準搭載する。高い性能を保ちつつ、装置を長く使い続けるための管理方法などを使用者自身で確認できる。
同社はこれまで、位置合わせマークを付けた試料ホルダーを使い、計測した座標をもとに観察位置を特定し、同一試料を複数の解析装置で観察できるリンケージシステムを提供してきた。しかし、リンゲージシステムでは解析装置によって観察範囲の見え方が違うため、同一箇所を確実に捉えられているかの判断が困難だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.