アナログ・デバイセズは、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」において、車載イーサネットである10BASE-T1Sに準拠する同社技術「E2B」を用いたボールバランシングのデモを披露した。
アナログ・デバイセズは、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)において、車載イーサネットである10BASE-T1Sに準拠する同社技術「E2B」を用いたボールバランシングのデモを披露した。
10BASE-T1Sは、帯域幅が10Mbps(10BASE)で、接続にシングルツイストペアケーブルを用いて(T1)、短距離接続を行う(ショートリーチ)ための車載イーサネットの規格である。車載イーサネットには帯域幅がより広い100Mbpsや1Gbpsの規格が存在しているが、これらはセンターECU(電子制御ユニット)などをつなげるのに対し、10BASE-T1Sは現在CANやLINで接続されているセンサーやアクチュエータとの接続を置き換えることが想定されている。車載システムをハードウェア中心からソフトウェア中心への移行を目指すSDV(ソフトウェア定義自動車)では、車載システムは車載イーサネットで接続されることが鍵を握っており、10BASE-T1Sもその重要な要素となっているのだ。
ただし、一般的なイーサネット接続の回路構成では、制御マイコンと通信のためのソフトウェアスタック、物理層ICなどが必要になる。回路のフットプリントも大きくなりコストも増加するため、10BASE-T1SによってCANやLINを置き換えるメリットが小さくなってしまう。これに対して、アナログ・デバイセズのE2Bは、10BASE-T1Sに準拠しながら、マイコンと通信ソフトウェアスタックを用いることなく物理層ICと同等サイズのICを用いてセンサーやアクチュエータとの接続を行うことができる。「先日BMWの採用が発表されたが、その他多くの自動車メーカーが検討を進めている。2025年内にはE2Bを採用した量産車が発売される見込みだ」(アナログ・デバイセズの説明員)。
E2Bの展示で見せたのが、4本の可動シャフトで支えたテーブル上のボールを落とさないように制御するボールバランシングのデモだ。各シャフトはセンサーで状態を検知してモーターで動作を制御できるが、これら4組のセンサーとモーターはECUを模したマイコン1個との間でE2Bによる10BASE-T1Sで接続されている。10BASE-T1Sは、走る、曲がる、止まるなどの車両制御をイーサネットで実現するためのTSN(Time-Sensitive Networking)に対応しており、このデモではテーブル上に載せたボールが落ちないように、各シャフトにおけるセンサーの検知やモーターの制御をTSNで同期しながら行っている。
この他、素子数約2万のマイクロLEDアレイの各素子をE2B経由で制御しプロジェクターのようにアニメーション映像を見せるデモも披露した。「今後ヘッドランプでは、このように素子ごとの制御を行うようになるだろう。E2Bであれば容易に実現できる」(同社の説明員)としている。
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