ソフトウェア開発の製品別CO2算定では、受託製造か自社製造かによってLCA(=ライフサイクルアセスメント)の評価方法は異なってくる。受託ソフトウェア開発(いわゆるSI)では、評価手法はクレードルトゥゲート(製造から出荷までを対象範囲とする)を採用しており(図1参照)、組み込みソフトウェアなどを自社製品として開発する場合の評価手法はクレードルトゥグレーブ(製造から廃棄までを対象範囲とする)となる。
ソフトウェア開発におけるCO2算定の重要な特徴は、ソフトウェア開発になくてはならない"開発者の活動”を重視している点である。すなわち就業者としての開発プロジェクトにかかる振る舞いや、通勤しオフィスを利用したり、時には自宅から会議に参加したりするといった一連の活動行為を詳細化し、CO2算定の対象とすべき点である。以下にプロセスと排出源の特徴的な考え方について少し言及したい(図2)。
人の活動が多くかかわるソフトウェア開発において、いわゆる製造前の企画局面(要件定義など)も評価対象プロセスに含まれるとし、また開発の品質管理や工程管理などプロジェクト管理、その為の会議なども評価対象に含まれる。
ソフトウェアと一体で納入されるハードウェアの調達は、一般的な製品での算定手法と変わらない。
ただ、ソフトウェア製品として一体的に使用されるOSやミドルウェアなどのソフトウェア部品については製品のCO2排出量が現時点で調達元から提示されてきていない。さらに、製品出荷後に非常に多くのユーザーに使われる現状を鑑みると、1ユーザーで案分され得るCO2割合は極めて小さいと想定できることから、カットオフ(算定対象から除外する)対象に該当すると想定される。
記録媒体などで直接輸送する場合を除き、現在のソフトウェアの輸送については多くの場合通信手段を介して運ばれる為、CO2排出量はネットワーク通信量に対する排出源単位を乗じて算定する。
ソフトウェア開発におけるPC端末やサーバ、モニターなどは、製造業における生産設備などで使用する電力などと置き換えて考えることができ、算定に関する考え方はそれらと基本的に変わらない。一方で、ソフトウェア開発ならではの考え方として、前述のように人がかかわる排出源要素を重要視することがポイントとなってくる。
開発スタッフがオフィスまたは客先/出張先などに移動する際に必要となったCO2排出量として、電車や自動車/航空機などの移動距離に応じた原単位で算出する。
開発スタッフが開発期間中に使用したオフィスの空調/照明などの電力使用によるCO2排出量として、オフィス全体面積に対する開発で使用したオフィスの床面積の割合をオフィス全体のCO2排出量に乗じて算出する。
このように、目に見えないモノであるソフトウェア開発のCO2算定の考え方が必要になることを、少しご理解いただけたのではないかと思う。
次回、第3回では、ソフトウェア開発のCO2算定の詳細ポイントについてさらに解説し、より深い理解につなげたいと考える。
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