本連載ではソフトウェア開発/運用でのCO2排出量見える化と、製造業における取り組みのポイントや算定における留意点を3回にわたり解説する。第2回となる今回は、そもそも製造業がなぜCO2排出量算定へ取り組まなければならないのかを解説しよう。
2024年に入り、欧州連合(EU)での「電池規則」の適用が始まるなど、モノづくりの領域においても環境対応が大きく進んでいる。
また近年製造業でも重要となっている環境対応を見てみると、ICTにかかるCO2削減はハードウェア面での研究開発が行われているものの、ソフトウェアについては十分といえるほどの検討が行われていなかった。筆者が所属するクニエをはじめNTTグループでは、ソフトウェアの分野においても、開発/運用を含めたライフサイクル全体でのCO2排出量削減が重要になると考えている。
しかし、業界全体としてはソフトウェアに関連するCO2排出量の実態把握もなされてこなかったのが実情である。このような背景から、数年来で算定のモノサシづくりやルール案の検討が重ねられ、2023年8月からは経済産業省の「製品別CFP算定ルール検討」の中でソフトウェア開発にかかるCO2算定ルールも議論されるに至った。
今回はソフトウェア開発におけるCO2算定の特徴的な要素を解説することで、今後皆さんが組み込みソフトウェアなどの開発におけるCO2算定を考えていく上での参考にしていただければと考えている。
日頃モノづくりに携わる皆さんにおいても、MMI(マンマシンインタフェース)などのインタフェースや、そのコアとなる制御系のソフトウェアの重要性はますます高まっていることと認識している。以下、製造業におけるソフトウェア開発でのCO2算定について、いくつかポイントを述べていきたい。
ICT関連製品(サーバやモニター、ネットワーク機器など)の製造については、SIerなどの発注元から製品別のCO2排出量を厳しく求められるようになる。具体的には製造時の排出量、客先納品までの輸送の排出量、梱包材などの廃棄物の排出量であり、今後細かい型番別での排出量や定格電力値についてもWebサイト上での開示が求められるようになる。
筆者が担当したソフトウェア開発のCO2排出量算定では、ハードウェア調達がCO2排出量の多くを占めていた。これはハードウェア製造元から製造時のCO2排出量が提示されておらず、いわゆる「金額算定」(調達金額をIT領域のCO2原単位に掛け合わせる算定方式)をせざるを得なかったことに起因している。
ご存じの通り、金額算定はCO2の過少見積もりを防ぐため、多くのバッファーを設けており、実測算定よりもCO2排出量がかなり大きく算定される。よって今後は、ICT機器も製造時のCO2排出量を求められてくるようになると思っている。
ハードウェア製品調達でのCO2の排出量を抑制するため、発注元はリサイクル製品の選択肢を重要視してくると考えられる。これは大きな変化である一方、ICTは先進技術の積極採用や追従も重要であり、メモリやセンサー、CPUなどの重要パーツは新世代のものを使いながらリサイクル/リユースに配慮したサーキュラー製品への対応がより一層求められてくるだろう。
ソフトウェア開発時のCO2排出量算定を求められることになるが、今のところ組み込みに特化したソフトウェアの算定ルールは業界団体などから発表はないため、今後、製造業でも所属団体などと連携して、標準化の取り組みを推進すべき時期に来ていると考える。
欧米では導入するITシステムのCO2排出量の算定が求められ始めており、国内にもこの流れは近くやってくると考えている。現在経済産業省で進めている(執筆時)製品別ルールでは、算定結果の自主検査に加えて第三者による監査が推奨されていることから、今後はCO2算定に対応できる開発ベンダーやコンサルタントなどの支援業者選定も重要になってくると考える。
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