三菱電機が「Automating the World」で描きたい世界 自動化の先に何があるのか「Automating the World」鼎談

三菱電機は「Automating the World」をビジョンに掲げ、「自動化」を切り口にさまざまな社会課題の解決を目指している。三菱電機の技術によって何を実現し、何を解決するのか。三菱電機 FAシステム事業本部 FAデジタルエンジニアリング推進部部長の水嶋一哉氏、同本部 機器事業部ロボット・センサ部主管技術長の武原純二氏と、MONOist編集長の三島一孝が鼎談を行った。

» 2024年02月29日 10時00分 公開
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 人手不足が深刻化する一方で、ロボット技術やデジタル技術の進展によって従来人手でしか行えなかった業務を機械で代替できるようになり、「自動化」への期待が高まっている。その中で、新たなビジョン「Automating the World」を掲げ、自動化によってもたらされるさまざまな価値を次々に形にしているのが三菱電機だ。

 展示会の出展内容を中心にロボット技術とデジタルマニュファクチャリングによる価値を2回にわたって紹介したが、3回目となる今回はデジタルマニュファクチャリングを担当する三菱電機 FAシステム事業本部 FAデジタルエンジニアリング推進部部長の水嶋一哉氏、ロボット技術を担当する同本部 機器事業部ロボット・センサ部主管技術長の武原純二氏とMONOist編集長の三島一孝の鼎談(ていだん)によって、Automating the Worldで三菱電機が目指す世界を掘り下げる。

「Automating the World」で人の生活を豊かにする「自動化」を

三島 新たに掲げた「Automating the World」では、どのような姿を目指しているのでしょうか。

水嶋氏 「Automating the World」は、「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「安心・安全」「インクルージョン」「ウェルビーイング」を重要課題とし、先進技術を活用した「オートメーション(自動化)」によってこれらの解決に貢献することを目指すものです。

photo デジタルマニュファクチャリングを担当する三菱電機の水嶋一哉氏

 最終的にはこうした社会課題を解決し、豊かな暮らしを実現することを描いています。三菱電機はシーケンサやサーボモーターなど製造現場の自動化に貢献する技術に強みを持っています。まずはこれらの技術で解決できることから重要課題に貢献することを考えています。

 これらのベースには、技術の進化があります。以前は現場に行って直接機械を調整しなければいけなかったものが、今ではシミュレーション技術によって仮想空間で行えるようになり、作業を大きく削減できるようになっています。また、モノづくりにおいて発生するさまざまなデータを収集し、映像や画像データとなどと組み合わせてAI(人工知能)技術を活用した分析を行うことで、生産現場でどのような問題が発生し、その要因が何であるかが把握でき、改善に向けた最適な判断が下せるようになっています。これらを生かして作業の最適化を図り、エネルギー消費を削減してカーボンニュートラルに貢献したり、熟練工の知見をデータ化し再現できたりすることで、人手不足や技能継承問題への対応を推進します。

 三菱電機は、製造現場で使われる機器のラインアップが幅広いことから、これらのデータを集めやすい立場にあります。自身が製造業であることから、モノづくりにおいてどういうデータがどういう意味を持つか、何が役立つかということを理解している点も強みです。現場のテクノロジープラットフォーマーとして次々に新しい技術を取り入れて自動化領域を拡張し、そこで働く人々への支援を進めてウェルビーイングの実現を目指します。

photo ロボット技術を担当する三菱電機の武原純二氏

武原氏 ロボットに関して言えば、特に人手不足や労働力不足への貢献を考えています。ロボット技術そのものも進化しており、従来は使用できなかった安全柵の無い環境でも使えるようになり、人の作業を代替できる領域も増えています。人が行うのが難しい環境の作業をロボットで代替できれば、より良い働き方に近づけることもできます。

 ロボットを通じて、製造現場で発生する物事をデータ化して分析し、付加価値を生み出して次のアクションにつなげられるように還流させることも可能になります。そういうデジタル技術を活用した環境を実現することで、より良い製造現場環境をつくり出すことを考えています。


IIFES 2024やiREX2023で示した「Automating the World」の具体例

三島 「Automating the World」で描いた姿の一端をIIFES 2024や2023国際ロボット展(iREX2023)などの展示会で具体的に示したということですね。

水嶋氏 そうですね。IIFES 2024ではデジタルマニュファクチャリングで現実世界と仮想空間を密接に連携させて「フレキシブル&サステナブル(柔軟で持続性のある)」なモノづくりの価値を訴えました。

 柔軟性を実現するためには、ハードウェアから集まってくるデータをソフトウェアでいかに使いこなすかが重要です。三菱電機は必要なソフトウェア群を拡充しており、それらをアピールしました。3Dシミュレータ「MELSOFT Gemini」やデータサイエンスツール「MELSOFT MaiLab」、SCADAソフトウェア「GENESIS64」、新たに提供を開始したロジックシミュレータ「MELSOFT Mirror」などです。これらを実際に活用して、リチウムイオンバッテリーの製造をイメージしたデモ用ラインを用意しました。2023年12月に発売した外観検査ソフトウェア「MELSOFT VIXIO」も用いてインライン検査も行いました。

photo リチウムイオンバッテリーのデモ用製造ライン。ソフトウェアツール群を生かして構築され、外観検査ソフトウェア「MELSOFT VIXIO」やリニア搬送トラックなど新たな技術も組み込まれている[クリックで拡大]

 工場内には多くの人手作業が残されています。これらの人の動きをデータ化し、行動の意味を把握する「行動分析AI」を参考出品しました。これは、人が同じ動作を繰り返しているものを一つの作業として認識し、確率的生成モデルを適用することで教師データなしで製造現場の人の作業を分析できるという技術です。製造現場には、「人の作業はデータ化しにくい」という課題があることに加え、学習用データの用意などの負担が大き過ぎてAIを活用できないということも起こりがちでした。この2点を解消する技術として、IIFES 2024でも大きな注目を集めました。これらの新しいデジタル技術を取り入れながら、新たなデジタルマニュファクチャリングの一端を示せたと考えています。

photo 行動分析AIのデモの様子。教師データなしですぐに繰り返し作業を認識し、自動分類できる[クリックで拡大]

武原氏 iREX2023でもIIFES 2024と同様に、柔軟で持続性のあるモノづくりの実現を訴えました。ロボットにおいては、人が得意なものは人が、機械が得意なものは機械にやらせることが特に重要になります。自動化を考えても、作るものの種類や量、導入企業の規模などによって環境はいろいろ変わり、それに応じて必要なロボットも変わります。

 特に今までロボットを使用していなかった環境での利用拡大が重要であり、そのハードルを下げることもわれわれの役割だと考えています。ロボットは柵の用意やティーチングなど、「使えるようになるまでの負荷」が非常に大きいことが問題視されています。iREX2023では、遠隔でのロボット操作技術や音声指示によるロボット操作技術などを参考出品し、大きな関心を集めることができました。新たな技術を取り入れることで自動化領域を拡大する意味でも非常に重要だと考えています。

iREX2023で出展した遠隔操作の様子(左)と音声によるロボット操作の様子(右)[クリックで拡大]

「SDGs」の変革を推進し「Automating the World」の世界を実現

photo MONOist編集長の三島一孝

三島 今後「Automating the World」を推進するために、どのようなことが重要だと考えていますか。

水嶋氏 現在の技術トレンドを見た場合、製造現場の中でデジタル技術をもっと使っていくことが必要だと考えています。製造現場にさらなる柔軟性を実現するためにはソフトウェアで可能なことを増やす必要があり、そのためにクラウドをベースとしたマイクロサービスとしてさまざまな機能を実現していきます。これらに必要なセキュリティの整備なども進めるつもりです。

 ただ、データやソフトウェアを活用するにしても、そもそも製造現場に対する知見がなければ具体的なアクションにつなげることはできません。その意味でも人の役割も従来とは異なる形で高度化し、より重要になっていくと考えています。これらの両面を支援して、より働きやすい環境をつくっていきます。

武原氏 ロボットだけではありませんが、製造現場をデジタル環境で再現できるデジタルツインの世界がいよいよ見え始めています。現状では機器や設備単体での再現にとどまっていますが、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンをまとめてデジタルツイン化できるように範囲を広げることが必要だと考えています。既にロボットの稼働データを収集して保全や診断を行うサービスなども展開していますが、こうした仕組みを他の機器にも導入することで、工場全体のデジタルツイン化も進むとみています。これらのデータを組み合わせることで、予兆保全やラインの最適化、品質向上などが図れます。そういう世界をいち早く実現したいと考えています。

 ロボット単体としては、あらゆる現場で求められる使い方にすぐに対応できる「活用のハードルを下げる」取り組みを引き続き強化します。まだまだロボットを活用している製造現場は限られています。プログラミングや面倒なティーチングもなく、簡単にすぐに使えるようにすることを目指しています。

水嶋氏 「Automating the World」のカギを握るデジタルマニュファクチャリングを成功に導くためには3つの変革が必要だと考えています。それは「SX(セキュリティトランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「GX(グリーントランスフォーメーション)」です。当社はこれらのSolution(ソリューション)を提供していくわけですが、この頭文字を並べると「SDGs」となり、くしくも「持続可能な開発目標」と同じになります。われわれも持続可能な製造現場を作り上げるために、この3つの変革を積極的に進めていきたいと考えています。

三島 ありがとうございました。



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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年3月28日