低環境負荷防食剤の開発にMIを活用、材料探索範囲が従来の1万倍にマテリアルズインフォマティクス

栗田工業は、Fracta Leapらとマテリアルズインフォマティクスを活用した低環境負荷防食剤の開発を開始した。従来の人手による材料探索法の1万倍の範囲を高速で探索できる。

» 2024年02月20日 11時00分 公開
[MONOist]

 栗田工業は2024年2月7日、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用した低環境負荷防食剤の開発を開始したと発表した。

 低環境負荷防食剤は、栗田工業と同社の海外子会社クリタ・ヨーロッパ、水処理関連のデジタル技術や製品を開発、販売するFracta Leapの3社で共同開発する。

 開発においては、外部データベースに保存されている数百万レベルの分子情報から、MIの機械学習を駆使して有望な候補材料を絞り込むことにより、探索や分析が格段に高速化した。

 従来の人手を使った方法では探索範囲が数百分子レベルだったが、MIを活用することで、その1万倍に相当する数百万分子規模の範囲を高速で探索できる。なお、半導体製造プロセスにおける材料溶解制御の分野で、MIの効果検証を先行したところ、人手を使った探索よりも優位の結果が得られたことが示された。

MIによる材料探索の高度化プロセス MIによる材料探索の高度化プロセス[クリックで拡大] 出所:栗田工業

 冷却水系の防食剤に使われていることが多いリンや亜鉛、窒素系化合物は、安全性に懸念があるため、オランダをはじめとした欧州各国で規制を強化する動きがある。従来品に代わる新しい防食剤を速やかに開発するには、その材料を効率的に探索することが急務となっている。

 栗田工業とFracta Leapは共同で、水処理における革新的なデジタルソリューションの構築を目標として「メタ・アクアプロジェクト」を進めている。同プロジェクトでは、機械学習やシミュレーション技術などを活用して水処理の設計、生産や運転管理の高効率化、高度化を達成した。今回、材料開発分野でも機械学習を利用して、材料探索の効率化、高度化を図るべくMIの導入を決定した。

 栗田工業は、迅速な開発スピードが求められる半導体産業をはじめ、水処理向けの材料開発分野にMIを幅広く活用する。これにより、クリタグループにおける基盤技術を強化し、節水、GHG(温室効果ガス)排出削減、資源循環に貢献するソリューションの創出を加速していく。

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