固定カメラとしては、ソラコムが2022年5月に発表したクラウドカメラであるソラカメを採用した。設置部が5cm角とコンパクトで底面マグネットにより簡単に設置でき、IP67の完全防水/防塵(じん)仕様、解像度はフルHD、高感度カラーナイトビジョンなど工場向けの性能を満たしている。カメラ1台で複数メーターの同時読み取りにも対応する。「ソラカメの機能は今後アップデートしていく予定であり、AIoTクラウドとの連携によりWIZIoT遠隔監視サービスでも活用できるようにしていく」(ソラコム 執行役員 日本事業責任者の齋藤洋徳氏)という。
スマートフォンカメラ向けのアプリはAndroid端末とiOS端末の両方に対応する。利用法としては、各メーターに対応するQRコードとメーター表示が同じ画面内に入るように撮影するだけでいい。クラウド上で撮影した画像のAI読み取りを行い、メーターの判別と自動記録を行う。スマートフォンカメラを利用する場面としては、カメラの設置が困難な場所の他、作業員が音や振動などをはじめメーター以外の点検も行わなければならない箇所での利用などを想定している。「現場の特性に合わせて固定カメラとスマートフォンカメラを組み合わせることで、トータルコストを抑えられると考えている」(宇徳氏)という。
読み取り可能なメーターとしては、円型、角型のアナログメーターに加えて、電力量計や水道計などに用いられている回転式/カウンター、7セグの発光LED/液晶表示、フォント表示のデジタルメーターに対応する。SaaS型サービスの特徴である機能アップデートにより、メーター以外で工場設備に付帯しているランプやモニターの文字表示への対応も検討している。ランプは2024年3月、モニターの文字表示は2024年度上期の予定。
なお、今回のWIZIoT遠隔監視サービスは巡回点検業務に対応するものであり、AI読み取り回数の上限は1日最大12回となっており、リアルタイム監視向けのサービスではない。
WIZIoT遠隔監視サービスの開発に向けた先行顧客の事例では、作業員が2人1組(読み取り係/記録係)で20カ所、1日3回点検の数値を紙に記録し、Excelに転記、報告書を作成する作業時間に総計170分を要していた。これらの作業について、ソラカメで10カ所を1日3回自動点検(作業員不要)、スマートフォンカメラで10カ所を1日3回手動点検(作業員1人)に置き換え、点検データのCSVファイルからExcelで編集し、報告書を作成した場合には、作業時間は30分となり82.4%削減できたという。これは、月間で140時間の削減であり、年間のコスト削減効果としては約350万円に達する。
これらのメリットを基に需要が顕在化している工場向けにWIZIoT遠隔監視サービスの展開を開始し、その後ビル、建設、インフラ業界に展開を広げていく方針。2027年度には、全社目標の半分に当たる売上高約50億円を目指すとしている。
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