低吸着で耐食性に優れる流路を実現したオンラインLCを発売、バイオ医薬品のプロセス分析に対応研究開発の最前線(1/2 ページ)

アジレント・テクノロジーは、医薬品業界におけるリアルタイムバイオプロセスモニタリングを目的として設計されたオンライン液体クロマトグラフシステム「Agilent 1290 Infinity II Bio オンラインLCシステム」を発売した。

» 2024年01月17日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 アジレント・テクノロジーは2023年12月20日、医薬品業界におけるリアルタイムバイオプロセスモニタリングを目的として設計されたオンライン液体クロマトグラフ(LC)システム「Agilent 1290 Infinity II Bio オンラインLCシステム(以下、Bio オンラインLC)」を発売した。[訂正あり]

【訂正】初出時に、製品名が「Agilent 1290IInfinity II Bio オンラインLCシステム」がとなっていましたが正しくは「Agilent 1290 Infinity II Bio オンラインLCシステム」です。お詫びして訂正致します。

 同社 ラボラトリーソリューション本部 クロマトグラフィー・質量分析テクニカル部門 LCプロダクトスペシャリストの林慶子氏に、Bio オンラインLCの特徴や構造、対応するサンプリング方法、今後の展開について聞いた。

製造ラインに組み込め多くの手作業を削減

アジレント・テクノロジーの林慶子氏 アジレント・テクノロジー ラボラトリーソリューション本部 クロマトグラフィー・質量分析テクニカル部門 LCプロダクトスペシャリストの林慶子氏[クリックで拡大]

MONOist Bio オンラインLCの特徴について教えてください。

林慶子氏(以下、林氏) Bio オンラインLCの大きな特徴は、オンラインLCである点とBioコンパチブルな素材である合金「MP35N」を流路に採用している点だ。

「Agilent 1290 Infinity II Bio オンラインLCシステム」 「Agilent 1290 Infinity II Bio オンラインLCシステム」[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー

 オンラインLCとは製造ラインに組み込めるLCを指す。Bio オンラインLCは、製造プロセスの中でサンプルを定期的に自動で採取して分析できる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、リアルタイムのモニタリングが行える。そのため、製造ラインと離して行うHPLCのプロセスモニタリングで生じる「サンプルを容器に採取」「希釈して冷蔵」「バイアルに封入」「連続での分析の実施」「クロマトグラムの取得」「ピークの確認」「値の出力」など、多くの手作業を自動化し省略できる。

 手作業を減らすことで、「ヒューマンエラーの削減」「作業員の拘束時間の低減」「作業員の離席による分析作業の中断」「労働力とコストのカット」にもつながる。

HPLCによるプロセスモニタリングの課題 HPLCによるプロセスモニタリングの課題[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー
プロセスモニターの種類 プロセスモニターの種類、手動と自動のプロセスモニタリング[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー

 MP35Nは、ニッケルを35%、コバルトを35%、クロムを20%、モリブデンを10%の比率で合成した合金で、生体適合性があり医療器具の材料として利用されている。従来品のLCの流路に利用されているステンレス「SUS316」よりも低吸着で耐食性と強度にも優れる。

 SUS316を採用した流路は、タンパク質、ペプチド、オリゴ核酸、糖などの生体分子を一定期間流すと吸着してしまう。さらに、化合物を測定するために移動相に高濃度塩溶液や高いあるいは低いピーエイチ(pH)の溶液を利用すると流路が腐食して黒くなり、交換しなければならなくなってダウンタイムが生じていた。

 一方、MP35Nを採用した流路は生体分子を流しても吸着しにくいため、抗体やペプチド、オリゴ核酸の分析に適す。耐食性と強度にも優れるため、移動相に高濃度塩溶液や高いあるいは低いpHの溶液を使用しても流路が腐食しにくく、交換によるダウンタイムを減らせる。

「MP35N」の特徴 「MP35N」の特徴[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー
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