「クリエイティブエンターテインメント空間としてのモビリティ」については、このADASシミュレーターにAR(拡張現実)技術を組み合わせることで、ユーザーが没入感のある体験を実現できるようにする。車両の外の光景をリアルタイムで3Dオブジェクト化し、さらに、マップデータを活用することで、ある地点でリアルな外界情報に対し、ARによる情報を表示させ、新たなエンターテインメントやゲーミング性を作り出すという。
例えば、「ポケモン GO」のような移動型ゲームで、クルマ内の表示デバイスを通して実際に見える景色の上に、リアルな形で巨大怪獣などを仮想表示してそこをくぐったり、目印に運転するような楽しみ方などがあり得るという。これらの実現に向けUnreal Engine 5を使用し、最新バージョンへの対応も進めていくとしている。
さらに、新たな価値を実現するために、開発者に向けたコミュニティー活動も強化する。AFEELA上で動くコンテンツやサービスを自由に開発できる、オープンな環境を計画中だという。例えば、便利なアプリケーションやMedia Barの表現、パノラミックスクリーンのテーマ、走行中のeモーターサウンドの音源、ナビ上への付加情報などを個別で開発できるようにする。「開発環境を幅広く提供し、車両データや走行データなど開示できる情報はオープンに提供していく予定だ」と川西氏は述べている。
新たにMicrosoft(マイクロソフト)との協業で、対話型のパーソナルエージェントの開発を開始したことも明らかにした。Azure OpenAI Serviceを活用し自然言語で意思疎通できるモビリティを実現する。
マイクロソフトでデータ、AI、デジタル アプリケーション プロダクト マーケティング担当のコーポレート バイス プレジデントを務めるJessica Hawk(ジェシカ・ホーク)氏は「現在モビリティにおけるAIの活用で期待されているのは、生成AIの導入とクラウドスケールの演算だ。これにより、モビリティの革新の可能性は大きく広がり、パーソナル化を加速させることができる。ボタンやスクリーンタッチによる操作から、会話型やマルチモーダルデータの活用へと変化し、独立したアプリやマニュアルから、これらが統合された世界へと変わっていく。分離された車内体験から統合された体験へと変わっていく」と変化について強調した。
さらに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの100%出資によるソフトウェア開発会社で「グランツーリスモ」制作チームが1998年に独立して設立されたポリフォニー・デジタルと新たに協業することも発表。「ポリフォニー・デジタルが持つ優れたシミュレーション技術とソニー・ホンダモビリティの実車技術を組み合わせ、人の感性を取り入れながらバーチャルとリアルを融合させた新たな開発手法を探索していく」と川西氏は説明した。
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