(1)付加価値のない時間の削減
ここまでインフラとその管理について説明しましたが、クラウド化のメリットの本質は設計業務にあります。
設計者の本来業務とは“創造性のある設計を行うこと”ですが、「何かを探している時間」によって、創造性を発揮するための時間が削られてしまうことが少なくありません。
■設計者の本来業務の時間を奪う「何か」とは?
図3に示した「CADを使用する設計者の時間の使い方の課題」を見てみると、設計者の時間の使い方の33%が“何かを探している時間=付加価値のない時間”となっていることが分かります。
CADデータについていえば、PDMシステムを運用していれば改訂履歴管理や流用設計状況を確認することができます。おそらく、多くの企業でPDMシステムのようなCADデータ管理の仕組みを導入しているかと思いますが、クラウドプラットフォームによるデータ管理であれば、全ての情報がクラウドに一元管理され、オフィス以外の場所からもアクセス可能になります。そして、設計者だけでなく、プロジェクトに関わる全ての人たちの「何かを探す時間」が削減され、業務効率化につながります。
(2)社内外との設計情報の共有
設計作業を社外の設計会社と一緒に行ったり、社員が在宅ワークや出張先で設計業務を行ったりする場合、クラウドプラットフォームを導入していないと次のような問題に直面します。
このとき、現状運用の(A)では他に流用されている部品やアセンブリに対しても改訂履歴管理を行う必要があり、同じく(B)では元図面(親)⇒流用図面(子)の管理を行う必要があります。持ち出されたCADデータの管理を運用などでカバーするには無理があるため、PDMシステムで正しく改訂履歴管理や親子管理を行う必要があります。
PDMシステム運用下での社外へのCADデータの持ち出しに関しては、社内の管理担当者にCADデータをチェックアウトしてもらい、そのCADデータのコピーを受け取る形で持ち出しを行います。この時点で、同一の2つのCADデータが社内と社外に存在することになります。そして、外部での設計作業が終わったら、そのCADデータを管理担当者に渡し、PDMシステムにチェックインしてもらいます。
■チェックアウト/チェックインとは?
社外の設計者はPDMシステムに入ることができないため、通常このような管理方法を行いますが、その管理運用は簡単ではなく、チーム設計を行う際のCADデータ共有のタイミングは遅れがちです。クラウドプラットフォームによるデータの一元管理によって、こうした課題が解消できると考えられます。
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