設計開発におけるクラウドプラットフォーム利用のメリット/デメリットを考える3D設計の未来(5)(2/3 ページ)

» 2024年01月10日 09時00分 公開

3.設計者の本来業務への影響

(1)付加価値のない時間の削減
 ここまでインフラとその管理について説明しましたが、クラウド化のメリットの本質は設計業務にあります。

CADを使用する設計者の時間の使い方の課題 図3 CADを使用する設計者の時間の使い方の課題[クリックで拡大] 出所:ソリッドワークス・ジャパン

 設計者の本来業務とは“創造性のある設計を行うこと”ですが、「何かを探している時間」によって、創造性を発揮するための時間が削られてしまうことが少なくありません。

■設計者の本来業務の時間を奪う「何か」とは?

  • 流用設計に使う過去のCADデータ
  • 共有しているCADデータの他者による改訂状況
  • 過去のデザインレビュー結果
  • 過去の解析結果
  • CADデータ以外の設計ドキュメント
  • 設計に関わる会話/コミュニケーションの履歴

 図3に示した「CADを使用する設計者の時間の使い方の課題」を見てみると、設計者の時間の使い方の33%が“何かを探している時間=付加価値のない時間”となっていることが分かります。

 CADデータについていえば、PDMシステムを運用していれば改訂履歴管理や流用設計状況を確認することができます。おそらく、多くの企業でPDMシステムのようなCADデータ管理の仕組みを導入しているかと思いますが、クラウドプラットフォームによるデータ管理であれば、全ての情報がクラウドに一元管理され、オフィス以外の場所からもアクセス可能になります。そして、設計者だけでなく、プロジェクトに関わる全ての人たちの「何かを探す時間」が削減され、業務効率化につながります。

(2)社内外との設計情報の共有
 設計作業を社外の設計会社と一緒に行ったり、社員が在宅ワークや出張先で設計業務を行ったりする場合、クラウドプラットフォームを導入していないと次のような問題に直面します。

  • 問題
    リアルタイムな設計情報の共有が望ましいが、それができない……
  • 理由
    社外の設計会社は受託元のフォルダやサーバに入ることができない
  • 現状運用
    社外で社員や外部設計会社が設計を行う場合、CADデータを持ち出すことになる。そして、そのCADデータは(A)改訂として部品改訂とアセンブリの改訂になる。(B)流用設計を行い、一部の部品が編集されたことで、元図面に対して派生した部品とアセンブリができる

 このとき、現状運用の(A)では他に流用されている部品やアセンブリに対しても改訂履歴管理を行う必要があり、同じく(B)では元図面(親)⇒流用図面(子)の管理を行う必要があります。持ち出されたCADデータの管理を運用などでカバーするには無理があるため、PDMシステムで正しく改訂履歴管理や親子管理を行う必要があります。

 PDMシステム運用下での社外へのCADデータの持ち出しに関しては、社内の管理担当者にCADデータをチェックアウトしてもらい、そのCADデータのコピーを受け取る形で持ち出しを行います。この時点で、同一の2つのCADデータが社内と社外に存在することになります。そして、外部での設計作業が終わったら、そのCADデータを管理担当者に渡し、PDMシステムにチェックインしてもらいます。

■チェックアウト/チェックインとは?

  • チェックアウト:システムからCADデータを持ち出すこと。持ち出したCADデータの原本はロックされ、持ち出した人が所有権(編集権)を持つ。持ち出した人以外は閲覧やコピーは可能だが、編集はできない
  • チェックイン:システムに持ち出したCADデータを戻すこと。チェックインが完了すれば、他の人がチェックアウトして持ち出し(編集)可能となる

 社外の設計者はPDMシステムに入ることができないため、通常このような管理方法を行いますが、その管理運用は簡単ではなく、チーム設計を行う際のCADデータ共有のタイミングは遅れがちです。クラウドプラットフォームによるデータの一元管理によって、こうした課題が解消できると考えられます。

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