漆は湿度の高い場所で器に定着する性質があるため、梅雨の湿度の高いシーズンは漆を扱うのがとても難しいです。蒔絵は漆を接着剤のように使って、その上に金属粉などを蒔くことによって漆器に絵柄を出します。そのため、中途半端に工程を進めて次の日を迎えると、今日塗ったところと昨日塗ったところの仕上がりに差が出て、見た目がちぐはぐになってしまいます。ほこりや風も大敵なので、ほこりが立っていない静かなところで作業できるのが理想です。
完成までに何十回も漆を重ねる長い工程があり、一度制作に入ると途中で後戻りはできないため、お客さまとの事前の入念な打ち合わせがとても大切です。「鳥」といったモチーフや「風」などのテーマだけを先にもらって、そこからは任せてもらったほうがスムーズに進むことが多いですが、利用シーンなどに合わせて、できる限りお客さまの要望に沿ったデザインでの制作を心掛けています。
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