　MONET Technologiesは2023年12月6日、三重県鳥羽市での医療MaaS（Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること）の実証事業に協力すると発表した。期間は2023年12月18日～2024年3月末となる。患者の受診機会拡大を目指す。

　鳥羽市では、高齢化に伴う運転免許の自主返納などによって通院が難しい患者への医療サービスの提供が課題になっている。また、医師の業務効率化に向けた対策も検討している。このような背景から、離島部を含めた市立診療所の医師が複数の診療所を受け持つグループ診療が2020年に始まった。医師が離れた場所から患者を診察するなど、ICTを活用したオンライン診療が行われている。

　実証事業はより充実した医療サービスを遠隔で提供するため、患者の生体情報をリアルタイムに収集、確認できるセコム医療システムの「セコムVitalook（バイタルック）」、離れた場所にいる医師と患者で高品質な映像と音声を共有できるウィーメックスの「Teladoc HEALTH（テラドックヘルス）」を車両に搭載する。

　実証事業では、患者の自宅付近に訪問した車両内でオンライン診療を行う医療MaaSと、通院が必要な患者を診療所まで移送する患者移送サービスを、1台のマルチタスク車両で提供する。どちらも事前予約制で、車両の用途は曜日や時間帯によって変更し、受診機会の拡大と車両の稼働率向上を目指す。1台で2つの用途を提供するのは初めてだとしている。

　利用対象は慢性疾患などで鏡浦診療所や同診療所の石鏡分室、今浦分室に通院中の人で、医師から説明を受けて実証事業への参加に同意する必要がある。医療MaaSでは石鏡地区と今浦地区に車両が訪問し、市立診療所の医師がオンライン診療を行う。患者移送サービスは石鏡地区と今浦地区から市立診療所までの区間を対象とする。

実証事業のイメージ［クリックで拡大］出所：MONET Technologies

車内の設備［クリックで拡大］出所：MONET Technologies

→その他の「モビリティサービス」関連記事はこちら

コロナ禍での移動の変化を調査、20代は出掛けなくなった？
国土交通省は第7回全国都市交通特性調査の結果とりまとめを発表した。
日本発で取り組む医療×MaaS、病院にも稼働率改善が必要だ
自動車業界以外の企業はMaaSでどんな課題を解決し、何を実現しようとしているのか。MONETコンソーシアムのメンバーでもあるフィリップス・ジャパンの戦略企画・事業開発兼HTSコンサルティングシニアマネジャー佐々木栄二氏に話を聞いた。
通院や往診が難しい地域に「医療MaaS」でオンライン診療、フィリップスとMONET
フィリップス・ジャパンは2019年11月26日、長野県伊那市において、同年12月から医療MaaS（Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること）の実証事業を行うと発表した。看護師と各種医療機器を乗せた「ヘルスケアモビリティ」が患者宅を訪問し、医師が遠隔からオンラインで診療できるようにする。実証事業の期間は2021年3月末までで、フィリップス・ジャパンは伊那市やMONET Technologiesと協力して取り組む。
CASEはMaaSではない、MaaS実現のための5つの要件
MaaSの発祥地であるフィンランドを訪れ、政府や関連企業にインタビューを敢行した。さらに、デンマークのコペンハーゲンで開催された第25回ITS世界会議にも参加して、MaaSとは何かを突き止めようとした。このコラムは、現時点では漠然としたMaaSという概念に対して、筆者なりに足で稼ぎ、要件としてまとめたものである。
トヨタが進めるコネクテッドカー“3本の矢”、ソフトバンクとの新会社も矢の1つ
ソフトバンクとトヨタ自動車は2018年10月4日、東京都内で会見を開き、モビリティサービスの基盤を開発、提供する新会社「MONET Technologies」を設立すると発表した。新会社の代表取締役社長兼CEOにはソフトバンク代表取締役副社長執行役員兼CTOの宮川潤一氏が就く。出資比率はソフトバンクが50.25％、トヨタ自動車が49.75％となる。資本金は20億円で、将来的に100億円まで増資する。
超高齢社会の「移動の足」を支えるには？　生きがいになる外出の促進を
本稿では交通政策白書2020の「要旨」を基に、前編ではCOVID-19の影響も含めた交通の動向について確認した。後編では、テーマ章である第2部について、日本における高齢者の生活と生きがいづくり、外出の実態について考察した上で、超高齢社会の「足」を支える施策の最新動向や先進的な取り組みを紹介する。