カーボンニュートラルへの挑戦

水素で工場の電力をまかなうとどんな成果が生まれるのかパナソニックRE100ソリューション(後編)(2/2 ページ)

» 2023年11月29日 11時30分 公開
[三島一孝MONOist]
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写真で見る「H2 KIBOU FIELD」

 ここからはH2 KIBOU FIELDについて、より詳しく写真を中心に紹介する。H2 KIBOU FIELDは、約6000m2の敷地に、570kW分の太陽電池、1.1MWh分のリチウムイオン蓄電池、495kW分の燃料電池、7.8万リットル分の水素タンクなどが設置されている。設備面積は実際に電力を賄う燃料電池工場の屋上部分の面積とほぼ一致しており、屋上設置を模擬する形の施設となっている。

photophoto 570kW分の太陽電池(左)と1.1MWh分のリチウムイオン蓄電池(右)[クリックで拡大]

 燃料電池は、既存の5kWの純水素燃料電池を99台連結し、495kW分の発電能力を確保した。当初は100台並べる予定だったが、500kW以上の発電量となると法規制上の区分が変わるためにあえて1台減らしたという。また、燃料電池の発電時には、熱と水が出る。現在は電力利用だけを行っているが2024年度にはこの熱を生かす設備を「H2 KIBOU FIELD」内に新たに設置する予定だ。「詳しく決まっていないが、おそらくシャワーなどの温水を活用できる施設を新たに建てたり、冷暖房で使用したりすることになるだろう」(説明員)。加藤氏は「熱を利用できるようになるとエネルギーの95%を有効活用できるようになる。より効率的な仕組みを構築できる」と語っている。

photophoto 99台が連結された495kW分の燃料電池(左)と燃料電池から発生する水(右)[クリックで拡大]

 燃料電池で使用する水素は、液体水素の形で7.8万リットル分タンクに保存されている。液体水素はパートナーシップを結んでいる岩谷産業から約1週間に1回配送をしてもらっているという。燃料電池で水素を使用するためには、液体水素を気化する必要がある。そのために複雑な配管で温度を上げ、最適な形で水素を燃料電池に送れるようにしている。

photophoto 液体水素のタンク(左)と、複雑な配管により液体水素を気化している様子。液体水素は-253℃以下であるため外気温で温度を上げることで気化している。そのため温度差により配管には霜がついている(右)[クリックで拡大]

 H2 KIBOU FIELDは、これらの太陽電池、蓄電池、燃料電池の3電池の統合制御が特徴だが、エネルギーマネジメントシステムによって、リアルタイムで発電状況の管理が行われている。また、状況によって蓄電池からの電力をより多く使用するケースや、燃料電池の電力を多く消費するケースなど、さまざまなパターンで実験を繰り返しながらノウハウを高めているという。加藤氏は「水素の発電については取り組む動きはあるが、3つの電池を組み合わせてここまで実際の環境で使用しているケースは世界でもあまりない。ノウハウを蓄積し先行者メリットを生かしていきたい」と述べている。

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